デジタルサイネージが、駅や電車内などの公共スペースや店舗などに、新しい情報伝達媒体として、急速に普及しています。
過去の大きな災害時における課題を受け、国もデジタルサイネージを、重要な情報伝達手段の媒体として掲げ、その整備を推進しています。
次世代のweb技術により、スマートテレビ、スマートフォン、タブレットなども共通のフォーマットとなり、広義のデジタルサイネージとして機能することも、大いに期待されます。
今後の、災害時の利用を考慮した情報システムの構築と、国際標準化を見据えた端末の研究開発に注目していきたい。
デジタルサイネージとは
ニュースや広告、様々な案内などの映像や文字情報をデジタル表示することができる、デジタルサイネージが注目されています。
インターネットを使って、情報通信することで、表示内容を瞬時に切り替えることができたり、タッチパネルや携帯電話を利用して、双方向の情報のやり取りも可能です。
特に、都市部を中心に、店舗やオフィスの他、駅や電車内、空港、病院、郵便局、役所などの公共スペースにて、急速に普及しています。
これまでにはない新しい情報媒体として、日本国内だけでなく、世界な市場の拡大、普及が見込まれています。
このデジタルサイネージですが、平時の広告機能だけではなく、防災や災害時の情報発信や、情報支援ツールとして活用しようという動きが広がっています。
もちろんこの動きは、今に始まったことではありませんが、過去の大きな災害における課題なども踏まえて、今後の取組に注目が集まっています。
災害時の利用について
東日本大震災後、内閣府では防災基本計画の中に、警報などの伝達手段の多重化、多様化を盛り込む、改訂を行いました。
災害時の最も有効な情報伝達手段は、防災無線だと言われていますが、文字や映像など、視覚による情報伝達の有効性も認識されていて、携帯エリアメール、ソーシャルメディア、ワンセグ放送、ケーブルテレビに並んで、デジタルサイネージもその媒体の1つとして、あげられています。
東日本大震災時に、活用された例として、「丸の内ビジョン」があげられます。
3月11日の地震発生の9分後には、NHK緊急放送への切り替えが完了。
翌日の朝まで、休止することなく放映し、その後、1週間NHK放送を続けました。
その後も、NHKの地震関連ニュースを配信し続けましたが、3月22日以降は、節電対応のため、79台中24台のデジタルサイネージを停止しています。
また、宮城県南三陸町の避難所に、デジタルサイネージが複数提供され、気象や生活情報の提供が行われました。
この「丸の内ビジョン」は、災害時に機能した良い例ですが、一方では、ほとんどのデジタルサイネージは、活用されなかったという事実もあります。
その要因としては、多くのデジタルサイネージの運用会社において、災害時非常時を想定した、運用マニュアルが整備されていない、もしくは、以前に災害時に放映するコンテンツが、用意されていないというものでした。
このような過去の災害時における課題などを踏まえて、今後の展開をどのようにしてくか、国を挙げて取り組んでいます。
災害時の課題について
総務省では、平常時および災害時における、公共情報伝達のための、「デジタルサイネージプラットフォーム構築」について、議論をしています。
これは、災害時だけでなく、気象情報や、交通機関の運行状況など、平常時の情報伝達にも利用できるものです。
また、デジタルサイネージシステムは、これまでの専用システム(第1世代)から、ネットワークを活用した、遠隔制御型システム(第2世代)へ、さらに次世代WEB技術を適用した、第三世代のシステムへと進展しています。
この次世代技術では、文書のデザインのみならず、グラフィックスや通信、データベースなどの機能が標準化されて、全てのブラウザに標準実装されます。
これは、ブラウザがスマートフォン、タブレット、スマートテレビなど、様々なデバイス共通の、アプリケーションプラットフォームになり、デバイスごとのアプリケーションの作成は不要になります。
つまりは、それぞれのデバイスのディスプレイが、デジタルサイネージとして、機能するということになります。
今後も国では、デジタルサイネージを国際標準化推進の、重要分野の一つとして推進していく予定ですが、そのような、プラットフォームの整備が加速する中、情報ディスプレイ端末に関しても、避難所や帰宅困難者が集まる場所など、災害時利用を想定した、ハードウェアの研究開発が求められています。
デジタルサイネージ用のディスプレイには、大型のものにはLED、プラズマ、プロジェクションなど、中・小型には、液晶ディスプレイが一般的には使用されています。
特に中型以上のものになると、消費電力が100W以上と大きく、省電力化が課題となっています。
そのため、停電・節電時に対応した、デジタルサイネージの開発も進められ、太陽電池、蓄電池、風力発電機を備えたもの、あるいはデジタルサイネージを搭載した、自動販売機を用いた、災害情報伝達システムも実証、実用化されています。
今後さらに、視覚情報だけでなく、五感に訴えるものも開発され、高齢者や障がい者など、災害弱者にも有用な情報伝達手段としても、期待されていくでしょう。
まとめ
当初2020年に開催予定だった、東京オリンピック招致は、デジタルサイネージの普及を、さらに加速化させました。
災害時、緊急時には、平常時の広告や情報の提供システムを切り替え、場所と時間に応じた有用な情報を、的確にかつ効果的に提供できるように、低消費電力ディスプレイや、情報インフラの研究開発など、まだまだ課題は多くあります。
国を挙げたイノベーションに、期待が高まります。
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