災害直後からの遺族支援活動チームDMORTの役割と必要性を解説します

自然災害

今後増えてくると予想されている、大規模な災害について、いろいろな備えを講じてはいますが、災害後の対策もとても大切だといえます。

ニュースなどでは、あまり報じられませんが、災害により死亡した、そのご家族への心のケアについては、様々な問題があります。

そのような家族支援を行っているのが、DMORTという災害死亡者家族支援チームです。

どのようにして、発足することになったのか、そしてどのような課題を持っているのか、ご紹介していきたい。

DMOR(ディモート)とは

DMORTとは、Disaster Mortuary Operational Response Teamの略語で、「災害死亡者家族支援チーム」と訳されています。

このDMORTは、もともとアメリカで組織化された、災害時に稼働するチームで、DMAT「災害派遣医療チーム」とならんで、位置づけられています。

日本では、まだまだそこまでの位置づけかははっきりしていませんが、災害現場から、発災早期より組織的家族支援の必要性が指摘され、災害医療の中で考えていかなければいけない組織の1つといえるでしょう。

日本DMORT

日本DMORTの発足は2006年。

その前の年JR福知山線脱線事故の、災害対応への問題提起を受けて発足をしました。

トリアージとは、災害発生時など傷病者の緊急度や重症度に応じて、治療優先順位を決定することを言います。

2005年JR福知山線脱線事故が起こったことは、記憶にもあると思いますが、その事故の際、日本で初めて200~300枚のトリアージタグが使われたといいます。

その中で、黒タグ(死亡または生命徴候がない)も多数使用されました。

その時の報告書には、「黒タグをつけられた犠牲者は1名も医療機関に搬送されず、病院の混乱を防ぐのに役立った」とされています。

しかし、その後の遺族の治療を担当する心療内科医から、「黒タグをつけられた遺族は納得しておらず、そのことが治療過程にも影響を及ぼしている」との報告があったとのことから、救命医療のみを考えるのではなく、死亡者やその遺族への医療という視点も必要という問題提起から、DMORTの必要性が指摘されるようになりました。

発足後は、大規模災害訓練への参加や、研修会などを重ねる中で、人材が育成され、災害現場への派遣が可能となってきました。

2013年の伊豆大島土石流災害、2016年の熊本地震への研究会メンバーの派遣を経験して、他機関との連携には法人格が必要なことを実感し、2017年7月14日に法人設立しました。

DMORTの必要性と役割

DMORTの果たすべき役割は、大きく3つあるとされています。

1つは、最も重要な活動である、災害直後からの家族支援です。

災害直後にケアを受ける機会のない家族は、その後長い期間心の問題を残すことになると言われます。

災害現場で死亡者・遺族に接する職種は、医療チーム以上に心的ストレスを感じる可能性が高いと判明しています。

遺族の家族支援と同時に、救援者の心的支援も考えていかねばなりません。

2つ目は、災害後、長期にわたる家族の支援です。

JR福知山線脱線事故から見える課題として、災害直後あるいは長期にわたって、災害医療に関する遺族への説明をする機会が整備されていなかったという点が挙げられます。

その疑問の中には、災害直後の説明で解決可能なものも、多く含まれています。

そのことを踏まえ、災害直後からの正確な医療情報を提供すること、そして中長期にわたって支援の道筋を示すことも大切な役割です。

3つ目に、DMORTの活動や研修を伝えていくことです。

特に、DMORT発足の契機ともなった、災害現場での黒タグの使用についてです。

黒タグの意義を、災害医療関係者に正確に伝達し、遺族への対応の仕方を伝えていくことも、重要な役割です。

これからの課題

先ほどお伝えした、黒タグの使用について、そして遺族の心理について詳しく解説します。

黒タグの使用について、遺族の間で問題視されている点は、

「本当に黒タグでよかったのか」
「赤タグではなかったのか」
「誰かが本当にみてくれたのであろうか」

という疑問です。

その疑問の裏には、実際にいくつかの問題点がありました。

1つは、医療者の間で、黒タグへの認識の乖離があった点。そして、黒タグの記載情報の乏しさです。

黒タグの判断をした時の状況は、医療者のみならず、家族にも大切な情報です。

いつ、だれが判断したかの記載は、最低限必要で、状況も記載すべきであるということ。

トリアージにおける、黒の意味は、搬送、治療の優先順位を示したもので、搬送に余力があれば、搬送対象にもなり、決して切り捨てを意味してはないことは、医療関係者だけではなく、私たち市民も含めて、正しい理解を求めていかないといけません。

この黒タグへの使用については、まだまだ問題が残っており、啓蒙活動は引き続き行われていくべきです。

まとめ

最後に、災害死亡者の遺族に接する機会は、DMORTだけでなく、私たちにもあり得ます。

その際、遺族を傷つける可能性のあることばは使わないほうがいいでしょう。

「気持ちはわかりますよ」は、遺族の簡単に分かってほしくないという心理を、引き出す恐れがあります。

また、

「楽になったんですよ」
「そのうち楽になりますよ」
「これから頑張ってください」

などは、その場限りの気休めに聞こえたり、十分に頑張っている遺族の気持ちを傷つける可能性もあります。

決して禁句は言いませんが、黙ってうなずくくらいのほうがいいこともあると、言われています。

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