自然災害に遭った時、私がまず先にすることは何でしょうか?
それは、「どこで何が起こっているか」という情報を収集することでしょう。
そして、その情報を整理し、「どう動くか?」行動に移していかねばなりません。
それを、国単位、自治体単位で行うのが、ISUT(災害時情報集約支援チーム)です。
このISUTの役割や、設立経緯について知り、今後の防災について学んでいきましょう。
ISUT(災害時情報集約支援チーム)とは
ISUT、災害時情報集約支援チームとは、その名の通り、様々な場所から集まってくる、災害に関する情報を集約、共有し、その情報を地図上に落とし込む集団を言います。
この目的は、災害時、最前線で対応にあたる方々の迅速な意思決定をするためです。
たとえば、平成30年6月の大阪府北部地震の際には、その日の夕方には、ISUT構成員が到着し、活動を開始しました。
情報共有WEBサイト「ISUTサイト」を解説し、大阪府災害対策本部や、自衛隊、DMAT、応援自治体、関係機関に対して、情報共有を行いました。
実際に、都市ガスの供給情報、避難所の位置と避難者数の規模、自衛隊の入浴支援場所の位置を重ねあわせ、どの地域で優先的に、入浴支援を実施すべきかの検討に活用しました。
ガス会社、大阪府、自衛隊など、複数組織の情報を集め、それらをまとめることにより、被害状況を認識し、対応を検討できたという一例です。
その後の災害発生時においても、現地災害対策を実施するとともに、本格的にISUTを運用するために、調節を行い現在に至っています。
ISUTの設立経緯
このISUTが誕生した経緯として、災害時の「情報共有」の重要性があげられます。
災害が発生すると、その対応のために、多くの機関、団体は同時進行で活動します。
救助、避難所支援、インフラ復旧、物資供給、ボランティア活動など、これらの活動を効率よく行うためには、それぞれの機関・団体間で、その災害に関する状況確認を統一する必要があります。
お互いに知っていることを、「情報」として表し、それらを共有することで、互いに知らないことをなくし、互いの活動の歩調を合わせたり、役割分担することが、緊急事態である災害時には重要です。
この情報の共有を支援するために、内閣府はISUTを立ち上げました。
ISUTメンバーは、内閣府と、防災科研、(国立研究開発法人防災科学技術研究所)で構成されています。
ISUTが集約、共有する情報は多岐にわたります。
震度分布、降水量分布、停電、通信途絶状況、道路通行可否状況、避難所状況、給水・入浴支援箇所、衛星画像、空中写真、ドローン画像など、所管の枠を超え、一元的に利用できるようにする点が特徴です。
システムとしては、防災科研が開発した、SI4P(基盤的防災情報流通ネットワーク)を活用して情報を共有し、一般公開できる情報は、NIED-CRS、防災科研クライシスレスポンスサイトへ、公開できない情報は、ISUT-SITEという地図システム上に可視化します。
ISUTの活動体制
ISUTは、内閣府が防災科研などの協力を得て活動します。
また、ISUTの構成員ではありませんが、国土地理院やJAXAなど、基盤的な地図情報や衛星画像などの、取扱いに長けた、専門的な機関とも連携して、現地のニーズに幅広く対応できるような体制を構築しています。
1チーム約5人程度で、同時に活動できるチームは4チームです。
都道府県の災害対策本部を、基本的な活動場所としますが、市町村からも直接オーダーを受けることを前提に、活動をしています。
ISUTを活用するために、デジタル関連の専門的な知識は必要なく、どのようなことで困っているか、どのような情報を把握したいかを、ISUTに連絡をもらえると、ISUTが集約している情報から、それらのニーズに沿った地図を、提案して作成していきます。
また、ISUTは具体的な、地図作成のオーダーを受けずとも、現地の状況等を勘案して、様々な機関が必要すると考えられる地図を、能動的に作成していくので、オーダーをせずとも、使える地図があれば随時活用できます。
ISUTが地図を共有するWEBサイトは、対象となる災害ごとに作成することになります。
都道府県や市長会などの協力を得て、市町村が活用しやすいような体制を、構築していきます。
ISUTの今後
ISUTは、平成31年度から正式運用が始まり、現在も多くの災害で活躍をしており、その機能においても向上を図っています。
ISUTの最大の課題は、最前線で対応する市町村を支援する手法が、十分に確立されていないことだと言われます。
どのタイミングで、どのような地図を作成すれば、より市町村による災害対応に役立つのか、こういったことを、様々な関係者と議論をしながら、確立していく必要があります。
また、ISUTに情報をデータで提供する民間事業者、(電力、ガス、携帯通信事業者等)の数は着実に増えていますが、更なるデータ共有体制の構築や、都道府県が集約している情報を、円滑にデータで共有する体制構築も必要になってきます。
まとめ
情報通信技術はどんどん発展し、これまでできなかったこと、手間がかかっていたことが、簡単にできるようになってきています。
スマートフォンの普及がそれを後押しし、多くの情報をいつでも、そして簡単に得られるようになりました。
それと同時に、激甚化する豪雨災害や大規模な地震、将来発生することが想定されている、南海トラフ地震や、首都直下地震災害もあります。
こうした、国難ともいえる自然災害に対峙するためには、様々な技術を、うまく防災にも活用し、これまでの災害対策をより効率的に行えるよう、進化させていく必要があります。
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