私たちのライフラインとして欠かせない、公共交通機関の災害対策を紹介していきます。
これらの災害対策は、私たち個人で、できるものではなく、国や行政に頼らなければ成しえることはできません。
過去の大災害から学ぶことで、今後、同じようなことが起きたとき、より安全に、より効果的に国民を支援できるよう、対策を進めています。
高速道路、鉄道・地下鉄、航空、フェリーとそれぞれの災害対策を詳しく解説していきます。
災害時のライフライン
この記事では、私たちが日常使っている、交通機関についての災害対策を紹介していきます。
高速道路、鉄道・地下鉄、航空、そしてフェリーは、私たちの利用だけでなく、物資の配送などにも利用するため、このライフラインが絶たれると、日常の生活が送れなくなることはもちろん、それが原因で、社会がパニック状態になることもありえるかもしれません。
それでは、それぞれの災害対策についてご紹介していきましょう。
高速道路の災害対策
道路の災害対策は、阪神・淡路大震災を教訓として見直されたものが多く、橋梁の耐震化がその中心となっています。
幹線道路の橋が崩れたことで、復旧に手間取ったという経験から、東日本大震災では、その復旧の様子は海外からでも称賛を受けました。
被災地の復旧工事
NEXCO東日本が運営する高速道路全域では、約5800カ所に上る被害が出ました。
海外からも称賛を受けたとされる、東日本大震災における早急な復旧とは、NEXCO東日本グループと、協力会社が24時間体制で行った結果、13日間でほぼ全ての応急復旧の完了というものでした。
この驚くべき再生力には、2つの要素が関係していると言われます。
一つは、日頃の道路整備で培われた、施工業者とNEXCO東日本グループの密接な連携です。現場レベルでの迅速な対応が、全体の復旧速度を高めたと言われています。
もう一つは、復旧の方法です。最初から、災害前の状況に戻すという、完全復旧を目指すのではなく、3段階での普及方法を採用したことです。
まずは、緊急復旧工事として、緊急車両が通行できるように、土嚢を積んだり、鉄板を敷いたりしました。
次に、一般車両が通行できるように、アスファルト材などで、段差をなめらかに加工するという応急復旧工事を行いました。
そして最後に、本復旧工事を行いました。NEXCO東日本では、2011年9月より、本復旧工事をスタートしましたが、工事完了は、2012年12月でした。
高速道路の管理体制
阪神・淡路大震災を教訓に、様々な施策を行ってきたNEXCO東日本。
まず着手したのは、橋梁の耐震補強です。東日本大震災では、この対策の効果で、倒壊や落橋など、甚大な被害はひとつもありませんでした。
また、通信システムの多重化も行っています。普段使用しているケーブルが災害で切断されたとしても、通信手段を失わないよう、衛生を使った通信システムを構築しています。
さらに、災害対策の中枢となるが、道路管理センターです。
この道路管理センターでは、各インターチェンジなどに設置された200以上の地震計情報、異常事態の有無、通行状況、気象情報を把握して臍帯に対応することができます。
そして、24時間体制で高速道路を巡回している交通管理隊と連携することで、災害時の迅速な対応を実現しています。
最近では、サービスエリア(SA)の災害対策も進めており、常磐自動車道・守谷SAでは、首都直下地震対策の一環として、防災拠点化するプロジェクトに企業や陸上自衛隊などとともに、取組みを行っています。
一般道の災害対策
高速道路における災害対策とは別に、私たちが日常使う国道など、国が所有する一般道を管理するのは、国道交通省道路局です。
10の支部、地方整備局に分かれており、大規模な災害が発生した時には、この地方整備局が中心となり、災害状況の情報収集、復旧工事にあたります。
国土交通省の災害対策は、地震、津波、豪雨が中心です。
地震対策は、橋梁の耐震化とライフライン設備を、道路地下の共同溝へまとめるという施策が進められています。
津波対策は、道路自体の対策というより、街の道路環境整備に近く、海岸からの避難経路の整備と、幹線道路に津波の被害を受けない対策などが練られています。
豪雨対策は、土砂崩れを予防する法面工事がメインで、法面の異変をモニタリングするシステムも構築されています。
鉄道・地下鉄の災害対策
鉄道各社が行っている災害対策を紹介していきます。
車などとは違い、高速で移動する新幹線ならではの施策を行うJR東日本や、地震だけでなく浸水や火災対策にも力を注ぐ東京メトロとそれぞれに特徴ある災害対策を行っています。
鉄道・地下鉄の復旧の流れ
地震などの大きな災害が起きた際、その規模によっては、鉄道各社、列車の運行を見合わせ、線路などの施設の安全を確認してから、列車運行を再開させます。
安全確認が必要な施設の範囲や、その被害状況によっては、運行見合わせの時間が長くなる可能性もあります。
もしこのような状況に遭遇した場合は、一人ひとりが勝手な行動をとらないようにしなければなりません。
乗客の勝手な行動によって、安全確認に多くの時間を要し、運行再開が遅くなることも考えられます。
必ず、係員の指示に従って、落ち着いて行動しましょう。
JR東日本の災害対策
JR東日本では、阪神・淡路大震災や、新潟県中越地震といった震災から教訓を得て、災害対策を行ってきました。
東日本大震災では、東北新幹線で、約1750カ所、在来線で約5250カ所、そして東北地方では、7路線が津波の影響を受けました。
特筆すべき対策として、一つ目は高架橋柱の耐震補強があります。柔軟性が低く、急激に破壊してしまうタイプの柱を耐震補強しています。
新幹線で、1万8500本、在来線では1万2600本と、そのようなタイプの柱、全ての耐震補強が完了しています。
そして現在、首都直下地震などに備えた対策として、総額3000億円の耐震補強を進めています。
二つ目に、新幹線の脱線対策です。車両に脱線防止位ガイドを付け、レールに転倒防止装置を設置しています。L型車両ガイドは2008年8月に全ての新幹線に設置を完了しています。
そして三つ目に、早期地震検知システムの導入です。JR東日本では、127カ所の新幹線地震計を沿線と海岸に設置しています。
このシステムは、沿線に大きな揺れが到達する前に、減速・停車させることで、被害を最小限に抑える技術です。
東京メトロの災害対策
東京メトロの災害対策は、施設の耐震補強をはじめ、浸水や火災などの二次災害対策も行われています。それぞれを詳しく解説していきます。
まず、地震対策については、地上の鉄道と同様に、大きな揺れに耐えられるように、高架橋やトンネルなどの耐震補強工事を進めており、東京メトロでは、平成24年度に全ての施設において、耐震補強を済ませています。
また、沿線には地震計が設置され、その情報と、気象庁が発表する緊急地震速報をもとに、総合指令所から各車両の運転規制を行うシステムを構築しています。
電力供給が止まった場合にも、停電対策を行っており、車両にはバッテリーを搭載、そして駅には非常用発電機やバッテリーも設置されています。
火災対策として、日本の地下鉄では、2003年に、災害対策基準が改正され、地下駅に避難階段を増設したり、排煙風量が足りない駅は、設備の改善などを行っています。
その他、防煙垂れ壁や二段落としシャッターなどを設置しています。
また車両には、避難表に先頭車両の前頭部に、脱出用扉を設置しています。
最後に、浸水対策として、駅への入口階段は、歩道より高い場所へ設置し、水の侵入を食い止めるために非常時に設置する止水板や防水扉が用意されている。
その他、トンネル内には防水ゲートが設けられています。
また、東京メトロでは、神田川の推移を常時観測しており、規定値を超えて水位が上昇した場合、丸ノ内線の運行を中止して、防水ゲートを閉めて、水の浸入を防ぐ対策を行っています。
東京湾北部地震の対策
内閣府では、東京湾北部地震が発生した際、その最大震度が6以上と想定し、万が一の時の災害対策に取り組んでいます。
もし、東日本大震災よりも揺れが激しければ、当日の鉄道、地下鉄はほぼ運休を中止することも想定されます。
JR東日本、東京メトロでは、その取り組みとして、まず、それぞれが持っている震度計が規定の数値を記録した段階で、運休が決まるようにしています。
また、JR東日本では、多くの列車が同時に被災し、通信等が途絶した中で、乗客の救助、救命に向けて何ができるか、準備・訓練についても更なる精査を行っています。
東京メトロも同じく、耐震対策を行い、乗客の安全対策や避難誘導などについても、検討を進めています。
空港施設の災害対策
日本には、全国100カ所近い空港施設が存在します。
最近では飛行機は、格安航空会社の参入などにより、すっかり身近な交通機関となりました。
ですが、ひとたび大災害が起きた際に、飛行機や空港施設には何が起きるか、なかなか知りません。
もしもの時に、取るべき行動について知っておきましょう。
搭乗中に災害が発生したら
大地震が発生した場合、その地域にある空港は、ただちに閉鎖されます。地震によって、滑走路にひび割れ等の損傷が起きている可能性があるからです。
運行プロセスの中で、最もデリケートな離着陸に関わる滑走路ですので、絶対の安全性が要求されるためです。
地震発生後、点検車両による安全が確認されるまでは、滑走路は離着陸禁止となります。当然、飛行機はその間、地上か上空で待機していることになります。
もし、滑走路に不具合が発見されると、着陸不可能ですので、飛行機は、他の空港に目的地を変更します。
その時には、飛行中の全ての飛行機に対し、管制と会社無線の両方から情報が送られてきます。
そして、変更する目的地をどこにするか、主に、残りの燃料の料と滑走路再開のタイミングを見ながら判断します。その他にも、自身は政治の飛行機の位置や、パイロットによる要請、駐機場に空きがあるか、飛行機の機種に適した滑走路が備わっているかどうか、同じ航空会社の地上サポートを受けられる環境にあるかといった要素も踏まえて、判断することになります。
ただ、待機している飛行機が多い場合、適当な空港が一杯になるケースもある為、時間的な猶予も含めて、総合的に判断する必要があります。
台風や集中豪雨が起きた際は、強風とそれに伴う乱気流が問題です。
急風発生時の離発着については規定があり、その規定を超えた強風が吹いた場合は、離発着は不可能となります。
また、たとえ規定の範囲内であっても、気流が悪く、安全に支障が出てくる場合は、機長の判断で離発着を中止することもあります。
東日本大震災時の空港にて
ここで、仙台空港にて、過去の東日本大震災で起こったことを紹介します。
仙台空港は、地震と、その約70分後に襲いかかってきた津波によって壊滅的な打撃を受けましたまず、誘導路や飛行機を駐機して置く場所の一部に液状化による、10cm程度の沈下が発生。また、滑走路と誘導路にひび割れが発生。
さらに、津波によってターミナルビル1階部分を含む、空港全域が浸水しました。
大量の土砂や瓦礫、約2000台にも及ぶ自動車などが漂着し、空港の制限区域を区画するセキュリティフェンスが、ほぼすべて倒壊した。
不幸中の幸いで、駐機していた飛行機がゼロでした。
しかしながら、電力供給機能も停止し、レーダーや航空完成機能を含む、機械設備や地上支援車両なども使用不能となったため、空港昨日は完全にマヒしました。
津波警報発表後、ターミナルビル会社や空港会社の職員たちが、空港内の人々を旅客ターミナルビルの3階に適切に避難誘導しました。
そのおかげで、周辺からの避難者を含めた1422人の安全が見事に確保されました。
さらに、避難者たちには、ターミナルビル会社が備蓄していた毛布や販売用の食料品などが、無償で提供されました。
フェリーの災害対策
日本全国を、10以上の航路で繋ぐ、長距離フェリー。大型旅客線は、地震に強いライフラインで、大震災の復興時に、派遣人員や車両の輸送で大いに活躍しています。
フェリーの災害時の役割やフェリーターミナルの役割を紹介していきます。
長距離フェリーの津波対策
洋上を運行するフェリーは、陸地を走行する鉄道などと違い、地震の影響がほとんどありません。
たとえ大地震が発生したとしても、航海中は運行を続けていきます。
航行に支障をきたす自然災害は、津波、台風、噴火がありますが、気象庁などの情報をもとに、船長や運行会社の運行管理者、そして海上保安庁とも連携しながら運行し、航路の安全が守られています。
自然災害で注意しなければいけないのは、
沿岸部や港内運航中の大津波です。
津波は、陸地に近づくほど、速度と破壊力が増すので、津波発生時は、遠洋へ非難するのが、船舶航行の常識となっています。
もし、乗客を乗せた状態で、沖合へ避難した場合、海上保安庁などと連絡を取りながら、港湾部の安全が確保されるまで避難を続けるか、被災エリアを離れて、他の都市を目指すことになります。
災害時のターミナルの約割
フェリーターミナルは、災害時に、その屋上を一時避難所として活用すべく、その整備を進めています。
苫小牧西港フェリーターミナルでは、震度6強程度にも耐えられる、補強工事が完了しており、津波が発生した時には、ターミナルの3階の一部と屋上を一時避難所として提供することを、苫小牧市と協定しています。
苫小牧西港ターミナルを管理している苫小牧港開発によると、東日本大震災を教訓に、大規模災害への対策を見直し、災害用毛布を増やすなど、災害時に一時的に避難する場所としてその機能を拡充することを検討しているようです。
また、屋上までの非常階段を増強して、津波の一時避難場所として整備を行い、ターミナル3階と、屋上を合わせて、1300人が避難できると試算しています。
災害時のフェリーの約割
航路は陸路と違い、大規模災害の影響を受けにくいという特徴があります。
そのため、大規模災害が発生した際には、復興支援の手段として力を発揮します。
主要な長距離フェリー会社は、国土交通大臣から災害救助命令が出された場合、政府要請に応じることになっています。
その内容は、まず、災害復興支援として、全国から被災地へと向かう自衛隊などの派遣要員、車両の運搬。
それと、大災害が発生した際、被災地の市町村長により避難支援要請があった時に、移動手段として、フェリーを提供すること、この2つとなっています。
また、フェリーは、避難所として、活躍する場合もあります。
阪神・淡路大震災では、神戸港に8雙、津名港、芦屋港、大阪港に各1雙の計11雙の旅客船を約1カ月提供しています。
内閣府では、東京湾北部地震の防災対策の一環として、警察、消防、自衛隊の部隊進出にフェリーを使用する計画を立てています。
警察約970人、消防約2550人、防衛省約4850人が、派遣される見通しです。
まとめ
これまで、陸路、空路、海路の災害対策をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
これらは、私たち個人で対策できるものではなく、政府による対策となります。
ご紹介したように、これまでの大きな震災の経験を踏まえて、いろいろな対策をしています。
私たちにできることは、国の支援は何があるのかを知り、実際に大震災が起きた際は、身勝手な行動をしないことを心がけねばなりません。
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