近年、日本では100年に一度と言われるような大きな災害が、毎年のように起こるようになってきました。自分の住む地域がいつ災害に見舞われてもおかしくない状況です。災害時に備えて非常食の準備をしている人も増えているでしょう。
ところで、「アルファ米」という言葉を聞いたことはありますか?おそらく、耳にしたことはあるけれど詳しくは知らない、という人が多いのではないでしょうか。最近ではこの「アルファ米」が非常食のトレンドとして注目されているのです。
この記事では、「アルファ米」とはどんなものを指すのか、そのルーツや非常食に適している理由などを紹介します。
「アルファ米」と「アルファ化米」はどう違うの?
「アルファ米」と似た言葉で、「アルファ化米」というものがあります。実は「アルファ化米」の方が一般的な名称で、「アルファ米」は、「アルファ化米」を開発した尾西食品というメーカーが商標登録をしている製品名なのです。
この記事では、一般的な「アルファ化米」について書いています。
アルファ化米とは?
アルファ化米を簡単に説明すると、「炊きあげたご飯を急速乾燥させたもの」です。そのまま食べられる状態を維持しながら水分を飛ばしているため、お湯または水を注ぐだけで、炊きたてのような食感を取り戻すことができる画期的な食品です。
アルファ化米のアルファとは、米のデンプンの状態のことです。生米はベータ化状態で、炊飯して柔らかくなった状態をアルファ化状態といいます。しかし、そのまま放置して冷やすと、デンプンが再び結晶化して、炊く前と同じベータ化状態になってしまいます。ベータ化状態になると、味が落ち、消化も悪くなります。
アルファ化米は、ベータ化状態の生米を炊飯してアルファ化させ、その状態を維持できる方法で乾燥させたご飯のことになります。
〈米の状態とその特徴〉
◯生米
・ベータ化状態
・腐りにくい
・体内で消化されにくい
◯ご飯(生米を炊飯したもの)
・アルファ化状態
・腐りやすい
・体内で消化される
◯アルファ化米(ご飯を急速乾燥させたもの)
・アルファ化状態
・腐りにくい
・体内で消化される
アルファ化米のルーツと最近のトレンド
ところで、アルファ化米はどのような経緯で開発されたのでしょうか。
そのルーツ辿ると、なんと第二次世界大戦中にまで遡ります。1944年の第二次世界大戦の末期に、旧・大日本帝国海軍が、「炊飯を行わずに食べられるご飯」の開発を、大阪大学産業科学研究所と尾西食品に依頼し、開発されました。終戦後は民間向けにも用途が広げられ、主にアウトドア用として利用されていました。
非常食として注目されたきっかけは、1995年の阪神・淡路大震災です。それまでの非常食の中心は乾パンであり、普段の食事とかけ離れていることから不満が多く寄せられました。
これを受けて、アルファ化米が被災地に届けられたところ、大変好評だったそうです。以降、全国の自治体や企業だけでなく、一般家庭にも非常食として普及しました。
最近では、企業努力や技術の進歩によって、もっと手軽に長期保存ができるよう進化し、宇宙食の分野でも活用されています。
アルファ化米が非常食に適している理由
アルファ化米が非常食に適している理由はたくさんあります。
第一に、お湯や水を入れるだけでご飯ができるため、手軽に食事の用意ができます。そのため、避難所などで大人数分の食事を用意しなければならない時にも最適です。
また、乾燥状態なので、軽量で持ち運びしやすく、長期保存が可能です。
さらに、最近のアルファ化米は、炊き込みご飯やピラフなどバリエーションが豊富です。食事が唯一の楽しみにもなりえる非常時も、飽きずに食べられます。
このような理由からアルファ化米は非常食に向いているのです。
まとめ
アルファ化米とは、炊きあげたご飯を急速乾燥させたもので、お湯や水を注ぐだけで食べられるようになるご飯です。
第二次世界大戦中に開発され、阪神・淡路大震災をきっかけに広く普及しました。
軽量で持ち運びやすいことや長期保存が可能であること、調理が簡単なことなどから、非常食に最適です。
また最近のアルファ化米は、味付きのものなどバリエーションが豊富で飽きずに食べられます。
この機会にぜひ最新のアルファ化米を試して、お気に入りのものを見つけてくださいね。
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