この情報化時代において、情報をスムーズに伝達し、スムーズに受け取ることは、普段の生活だけでなく、災害時においても非常に大切なことです。
ただ、外国人に対して、スムーズな伝達を行うとなると、日本同士のそれに比べると、容易でないことはご想像の通りです。
このことを解決するために設立された、災害時外国人支援情報コーディネーター制度が、各被災地で運用を開始しています。
この制度について、役割や成り立ち、そして実際にどのように運用されているのか、解説していきましょう。
災害時外国人支援情報コーディネーター制度の概要
災害時外国人支援情報コーディネーターは、避難所に寄せられる情報を整理し、外国人被災者からの各種ニーズを把握して、自治体職員などへ伝達することが、主な役割です。
そのために、都道府県及び政令指定都市は、日ごろから地域国際化協会と連携し、外国人対応を行っていることから、このコーディネーターを配置可能な体制を確保することが期待されています。
またそれに限らず、外国人住民数等の地域の実情に応じ、市町村においても配置可能な体制を確保することも考えられています。
都道府県レベルにおいて、コーディネーターが配置される場合、その役割は、行政等からの情報と、外国人被災者のニーズのマッチングですが、それに加え、市町村におけるマッチングが円滑に行われるように、支援することまで含まれています。
また、市町村レベルにおいて、コーディネーターが配置される場合は、その役割は行政等からの情報と、避難所巡回などにより把握された、外国人被災者のニーズのマッチングを行うことにあります。
このように、コーディネーターの役割は幅広いため、災害時に円滑にコーディネーター制度を機能させるには、平時から関係団体などと連携を図っておくことが、重要であるとされます。
関係団体の例としては、
・入国管理局
・地域国際化協会
・多文化共生マネージャー
・NPO、社会福祉協議会
・その他外国人コミュニティの核となるもの
があげられますが、逆に、関係団体にとっても、重要であることから、日ごろから相互に顔の見える関係の
コーディネーター制度ができるまで
このコーディネーター制度ができるまでの流れを解説していきましょう。
近年日本では、外国人住民数が増加している現状があります。
更に、自然災害が頻繁に発生しているなかで、総務省では、「情報難民ゼロプロジェクト」を開催し、2020年の目指す姿の1つとして、避難所などにいる外国人被災者への情報伝達を支援する、「災害時外国人支援情報コーディネーター」の配置が示されることになりました。
これを受け、平成29年5月に、「災害時外国人支援情報コーディネーター制度に関する検討会」を設置し、大きな課題として挙げられている3つについて、解消すべく検討が重ねられました。
この課題とは、
・言語の壁がある
・背景知識が不足している
・食生活や習慣などのニーズが多様
であり、情報の受け手側の課題と、情報の出し手側の課題がそれぞれ含まれています。
これらを解決するために、災害時に行政などから提供される情報を整理し、外国人被災者のニーズとのマッチングを行う役割、つまりは、このコーディネーター制度設立の流れになったのです。
コーディネーターとなる者は、研修を受講し、活動に要する知見を身につけておくことが必要です。
既存の研修を活用するなど、受講者の災害対応経験に有無に応じて、必要な研修が実施されることが望ましいとされます。
災害時外国人支援情報コーディネーターの仕組み
外国人被災者への情報伝達が主な役割である、コーディネーターの役割を担う者が、実際に配置された代表的な例に、平成28年の熊本地震の対応があります。
こちらを例に仕組みを紹介しましょう。
熊本地震では、熊本市がセンターの設置を行い、熊本市国際交流振興事業団が、同市の国際課及び災害対策本部と連携しながら、その運営を行いました。
運営においては、熊本市国際交流振興事業団を中心に、同市職員、地域国際化協会職員、多文化共生マネージャー及び、翻訳ボランティアをメンバーとした体制が組まれました。
具体的な活動としては、災害情報を英語や中国語などに翻訳したうえで、外国人被災者に伝達するとともに、数名のチームに分かれて避難所を巡回し、直接外国人被災者と接することで、ニーズの把握や通訳を行いました。
その中で、センターの構成員の中で、過去の災害における外国人被災者の豊富な支援実績を持つ数名が、提供される膨大な情報中から、外国人被災者のニーズに合わせて、伝達する情報を選択するという、コーディネーターの役割を果たしました。
また、この地震では、センターの人員が不足したため、県外の地域国際化協会から職員派遣を受けました。
まとめ
日本においては、来年東京オリンピックが、開催予定となっていることもあり、コーディネーターの養成のため、多くの研修が開催され、対応可能な体制の整備行われるでしょう。
そして、増加する自然災害においても、スムーズな対応ができるように、コーディネーターの整備に期待したいものです。
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