天候は私たちの生活にとっても、密接な関係です。雨が降らなければ飲み水は確保でなくなりますし、日光が地上へとふりそそがなければ、農作物などが育ちににくくなるので、野菜が高騰したりまします。また、暑ければ冷たい飲み物が売れ、寒ければ温かい飲み物が売れるなど、企業の商品・サービス の売れ行きにも影響が及ぼします。
その一方、天災・自然災害とよばれる現象は、時には家屋への被害や人命を奪うほどの私たちにとって、脅威となる場合があります。自然災害による被害を回避するには、まず自然災害はなぜ起きるのか、どのように起きるのかを知り、被害を最小限にできるよう理解を深めることから始めましょう。
日本に多い自然災害のひとつ【台風】
日本においての台風は、災害を引き起こす原因として代表的な自然現象のひとつで、毎年たくさんの台風が日本に上陸、通過しています。中でも近年最大の被害を起こした台風が「伊勢湾台風」です。死者4,697名、行方不明者401名、負傷者38,921名と今では考えられないほど甚大な被害となりました。また、家屋にいたっても全壊40,838棟、半壊113,052棟と、相当数の被害が発生し、復旧にも時間を要しました。
台風と呼ばれる異常気象は、主に北西太平洋付近で生まれた「熱帯低気圧」が風速17.2m/sを超えたものを指します。赤道付近の熱帯地域では海水の温度が高く、その海上では上昇気流が発生しやすくなっています。その上昇気流に大量の水蒸気が上昇し、上空の冷たい空気に冷やされることで水滴に変わり、それらが集まることで雲になります。その雲がさらに、積乱雲(入道雲)に発達します。そして、この積乱雲が他の積乱雲とまとまると渦が発生しの中心の気圧が低下します。それが発達することで「熱帯低気圧」となり、大規模なものが「台風」となるのです。
天気予報で台風の規模について、よく聞きますが、自然災害の調査を行う上で、その地域を通った台風について調査するには、「強さ」と「大きさ」で規模を判断します。
強さの階級分け
階級 | 最大風速の目安 | 平均風速の目安 |
---|---|---|
強い台風 | 33〜44m/s未満 | 15~20m/s未満 |
非常に強い台風 | 44~54m/s未満 | 20~30m/s未満 |
猛烈な風を伴う台風 | 54m/s以上 | 30m/s以上 |
大きさの階級分け
階級 | 風速15m/s以上の半径 |
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大型(大きい) | 500km以上〜800km未満 |
超大型(非常に大きい) | 800km以上 |
自然災害調査士が家屋調査するにあたり、台風の規模をこの「強さ」と「大きさ」の基準を元に判断し、調査に使用しています。
近年の集中豪雨、ゲリラ豪雨など注目【雨】
とても身近な気象現象ですが、大雨による浸水や、土砂災害などの自然災害を引き起こす原因となる場合もあり、注意が必要です。近年話題となっている「ゲリラ豪雨(局地的大雨)」など、雨による被害が注目されています。
ある地域に集中して、強い雨が降る大雨のことを「集中豪雨」と呼びます。発生の原因は台風と同じく「積乱雲」です。また、ビックビルディングという現象が一つの要因と言われています。ビックビルディング現象とは、特定の地域に次々と積乱雲が発生し巨大な積乱雲が現れる現象です。
また、気象庁の発表している定義では、
同じような場所で数時間にわたり強く降り、100mmから数百mmの雨量をもたらす雨。積乱雲が同じ場所で次々と発生し・発達を繰り返すことにより起き、重大な土砂災害や家屋浸水等の災害を引き起こす。
【引用:天気予報等で用いる用語|降水】http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kousui.html
とされています。
ゲリラ豪雨はごく狭い限られた範囲において、短時間に激しく降る雨のことで、発生する時間や場所が予測できない、という特徴があります。ゲリラ豪雨はマスコミによって付けられた通称で、気象庁では「局地的大雨」と言われています。近年では、夏の大都市で数多く観測されていることから、ヒートアイランド現象が関係していると言われています。大都市では、緑地や畑などが少ないため、地表の温度調節ができずにそのまま熱がこもった状態になり、積乱雲が発生しやすい状態になるためゲリラ豪雨が発生しやすくなると考えられています。
気象庁での局地的大雨の定義は、
「急に強く降り、数十分の短時間に狭い範囲に数十mm程度の雨量をもたらす雨。「局地的な大雨」とも言う。」(備考)単独の積乱雲が発達することによって起き、大雨や洪水の注意報・警報が発表される気象状態でなくても、急な強い雨のため河川や水路等が短時間に増水する等、急激な状況変化により重大な事故を引き起こすことがある。
【引用:天気予報等で用いる用語|降水】http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kousui.html
とされています。
日本でも発生件数の多い竜巻など【突風】
突風はその発生メカニズムから主に3種類に分類することができます。「竜巻」「ダウンバースト」「ガストフロント」です。日本ではあまり発生するイメージはありませんが、大小合わせて30件以上観測する年もあり毎年多くの竜巻が発生しています。日本で過去最大級の竜巻が発生した2012年5月6日の茨城県つくば市での被害は、家屋の全壊が83棟、半壊180棟、一部損壊280棟と発表されています。
竜巻は積乱雲の底から地上に向かって延びる強い空気の渦巻きです。発生のメカニズムはまだ未解明の部分もありますが、積乱雲が原因のひとつとされています。積乱雲の中でもスーパーセルと呼ばれる巨大なものが発生すると、その中で生まれた激しい上昇気流が回転をはじめ、渦となり、竜巻へと変わっていくと考えられています。他のサウンバースト、ガストフロントも同様に積乱雲が原因と言われています。
竜巻の規模を表すものに、1971年シカゴ大学の藤田哲也博士によって開発された「藤田スケール(Fスケール)」があります。被害が大きいほどFの値が大きく、風速が大きかったことを示します。日本ではこれまでF4以上の竜巻は観測されていません。
藤田スケール
F0 | 17~32m/s(約15秒間の平均) | テレビのアンテナなどの弱い構造物が倒れる。小枝が折れ、根の浅い木が傾くことがある。非住家が壊れるかもしれない。 |
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F1 | 33~49m/s(約10秒間の平均) | 屋根瓦が飛び、ガラス窓が割れる。ビニールハウスの被害甚大。根の弱い木は倒れ、強い木は幹が折れたりする。走っている自動車が横風を受けると、道から吹き落とされる。 |
F2 | 50~69m/s(約7秒間の平均) | 住家の屋根がはぎとられ、弱い非住家は倒壊する。大木が倒れたり、ねじ切られる。自動車が道から吹き飛ばされ、汽車が脱線することがある。 |
F3 | 70~92m/s(約5秒間の平均) | 壁が押し倒され住家が倒壊する。非住家はバラバラになって飛散し、鉄骨づくりでもつぶれる。汽車は転覆し、自動車はもち上げられて飛ばされる。森林の大木でも、大半折れるか倒れるかし、引き抜かれることもある。 |
F4 | 93~116m/s(約4秒間の平均) | 住家がバラバラになって辺りに飛散し、弱い非住家は跡形なく吹き飛ばされてしまう。鉄骨づくりでもペシャンコ。列車が吹き飛ばされ、自動車は何十メートルも空中飛行する。1トン以上ある物体が降ってきて、危険この上もない。 |
F5 | 117~142m/s(約3秒間の平均) | 住家は跡形もなく吹き飛ばされるし、立木の皮がはぎとられてしまったりする。自動車、列車などがもち上げられて飛行し、とんでもないところまで飛ばされる。数トンもある物体がどこからともなく降ってくる。 |
【引用:藤田(F)スケールとは】http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/tornado1-2.html
今後も震災級の発生が懸念される【地震】
我々の今立っている大地は、陸の上に存在する幾重のプレートに乗っています。世界は現在十数枚のプレートからなり、大陸を載せている大陸プレート、海だけを乗せている海洋プレートからできています。地震はこのプレートになんらかの力が加わることで、内部にひずみが商事、ずれることで発生すると考えられています。
地震の強さは「マグニチュード」と「震度」という指標が使われます。マグニチュードは地震の規模を表します。M7、M8という表記で表され、値が大きい程、規模がが大きくエネルギーも強くなります。マグニチュードは1つ増えるごとに約32倍の規模になります。震度は揺れの大きさを現します。震度は現在下図のように10段階で表されています。
震度とゆれの状況
【引用:震度について(気象庁)】http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/index.html
主に東北以北や日本海側に多い【雪】
日本は、日本列島の中央に連なる標高の高い山地が、日本海側に大雪を降らせ、南岸低気圧が太平洋側に雪を振らせています。台風や竜巻と違い、雪による突発的な被害はありませんが、毎年大雪によって人命や家屋などに対しての被害が発生しています。雪による被害は降った後に多く発生していて、堆積した雪の重さで家屋が破損したり、除雪の際での事故が多くあります。雪害による代表的な原因が、雪崩、積雪(豪雪)、雹(ひょう)、霰(あられ)があります。どれも自然災害を調査する上で、家屋の破損原因となるものです。
雪崩は、山などの斜面に積もった雪が、重力の作用によって大量に崩れ落ちる現象です。そのメカニズムは「形」「水分の含有量」「すべり面の位置」の3つに分類されます。また、雪崩でも「表層雪崩」と「全層雪崩」の2種類がありますが、表層雪崩は時速100kmから200km、全層雪崩は40kmから80kmで滑り落ちると言われ、とても危険な自然災害です。
また、地表に堆積して時間の経過した雪は硬く重くなる傾向があり、「しまり雪」と呼ばれています。これが屋根等に堆積してしまうと家屋に負荷がかかり、最悪の場合は倒壊する可能性もります。100cm堆積した雪に対し100㎡あたり約300kgという観測データがあります。仮に屋根が100㎡とした場合、30tの荷重がかかる計算になります。積雪は他にも、落雪による事故、歩行中の転倒、屋根での除雪による転落事故や、自動車によるスリップ事故などを引き起こすので、注意が必要です。
以上の今回は、台風、雨、突風、地震、雪の4つの自然災害を紹介させていただきました。自然災害によって引き起こされる被害を知っておくことで、減災へと繋がります。自然災害はいつも身近にあるということを認識し、常に災害による被害を想定し、備えることが必要です。
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