竜巻、落雷、寒波、猛暑など地震や津波以外の自然災害で、近年、私たちの生活に大きなダメージを与える異常気象が増えてきています。
最悪の場合、死亡するといった異常気象もある中、私たちは、それらに対する知識をこれまで以上につける必要があります。
自然の猛威は、いつやってくるかわかりませんし、備えさえしておけば、防げることも多いからです。
ここでは、異常気象のメカニズムなどを知っていただき、自分でできる備えをしていくキッカケになればと思います。
日本で起きている異常気象
異常気象というのは、気象庁で30年に1度程度で起こる、自然現象のことをいいます。
地震、津波、台風、洪水などは、よく聞く災害ですが、自然の驚異はこれらだけではありません。
竜巻、雷雨、寒波、豪雪、猛暑など毎年日本のどこかで、このような異常気象が発生しています。
最終的に、このような異常気象に対する備えは、それらに対する知識を自分自身が持っているかです。
ぜひこの機会に、基礎的な知識を知っていただきたいです。
竜巻のメカニズム
竜巻には、季節では夏から秋にかけて、年間統計では、7月から10月までが極端に多くなります。
時刻は、午後2時から午後5時にかけてが多いようです。
竜巻は、大気が不安定になりやすい気象条件のもと発生しやすくなります。
その条件とは、「積乱雲」の発生です。
積乱雲は、地面が温められている時に、上空に冷たい風が吹き込むなど、地面と上空の温度差が激しくなり、大気が不安定になると、発生しやすくなります。
よって、竜巻も夏場に発生せる頻度が高くなるのでしょう。
積乱雲の高さは、高いものいで15km程で、直径は大きくて100数十mです。
この中では、強い上昇気流と下降気流による対流活動が活発化しています。
その上昇気流が対流活動により激しい回転を帯びると、渦を巻く漏斗場の雲を伴う竜巻が発生するのです。
積乱雲は、竜巻の他に、ダウンバーストやガスフロントといった、突風を吹き降ろすこともあり、また発達していくと、スーパーセルとなります。
竜巻の怖さ
1991年から2006年までの統計で、日本における竜巻発生数は、年間平均約17個です。
一方竜巻の本場とも言えるアメリカにおいては、年間平均約1300個。
一見この発生個数の差で、安心する方もいるかもしれませんが、両国の国土面積比から換算すると、日本は米国の3分の1程度の発生回数となります。決して少ない数字ではありません。
竜巻は、突発的に発生するばかりか、気象レーダーにも映りにくいことから、メカニズムの研究も進んでおらず、今だに多くの謎を残しています。
ですが、最近では、国内における竜巻被害のニュースが増加傾向にあり、他人事では済まなくなってきています。
これは、単に気象観測機の発達や、カメラ付き携帯電話の普及によって、私たちの目や耳に触れる機会が増えただけではありません。
温暖化といった日本の気象の変化によって、竜巻が増えたという、専門家からの指摘も多くあります。
積乱雲と竜巻のしくみ
竜巻とは、さきほどご紹介したとおり、渦巻き状の上昇気流のことですが、発生する場所や数、形状によりいつくかの分けることができます。
「多重渦竜巻」複数の竜巻が同時に発生する現象
「衛星竜巻」一つの太い竜巻を中心に、複数の小さな竜巻が発生する現象
「空中竜巻」渦が地面や海面まで伸びていない竜巻
「水上竜巻」地面ではなく、海上で発生した竜巻
これら竜巻は、突発的に発生するため、まだまだ研究が遅れており、いまだ謎に包まれていることが多いです。
日本で発生した主な竜巻
日本で過去に発生した主な竜巻のうち、代表的な2つを紹介します。
「平成11年豊橋市竜巻」
1999年9月24日6時、台風18号は熊本県北部に上陸し、その後、山口県から日本海へ進みました。この台風が原因で4個もの竜巻を発生させました。
そのうち最大の竜巻は、豊橋市で発生したもので、24日午前11時すぎに、愛知県豊橋市野依町付近で竜巻が発生。
市街地に大きな被害を与えながら北北東に進み、11時18分ころには、豊橋市役所東側を通過。
11時21分には豊川市との境界付近に達し、一旦漏斗雲が消えて竜巻は消散したかのように見えましたが、徐々に勢力を弱めながらも進路をやや東寄りに変えて進み、豊川市に入った。
11時28分には、東名高速道路豊川インターチェンジの東側を通過し、11時30分ころに一宮町長山(現豊川市)まで達したところで消滅しました。
この移動の過程で、ビニールハウス・ガラス温室、公立文教施設等が大きな被害を受け、火災も1件発生しました。
この竜巻の規模は、藤田スケール「F2」と発表されたが、車が約5m持ち上げられていること、住宅の全壊が多数に及んだこと、電柱が多数倒れていることなどの状況から藤田スケールで「F3」に変更されました。
「平成18年佐呂間町竜巻」
2006年11月7日、北海道を寒冷前線が通過。13時過ぎに発達した積乱雲が佐呂間町上空に差し掛かっていました。
13時23分、北海道常呂佐呂間町若佐地区の新佐呂間トンネル工事現場付近で、竜巻が発生しました。
竜巻は、若佐地区の中心部をほぼ南から北に縦断。被害は長さ約1.4km、最大幅約300mという、きわめて限られた狭い範囲に発生し、災害地から15km以上まで飛散物が点在していました。
北海道東部では、近年竜巻の被害がほとんど報告されていなかっただけに、この竜巻被害は地域に衝撃を与えました。
被害を受けた範囲が、極端に局地的だったので、死者・重傷者の多くは、竜巻が直撃したトンネル工事事務所の所員などで、若佐地区の住民の人的被害は比較的軽度となりました。
当初、気象庁は竜巻の規模を藤田スケールで「F2」以上と発表していましたが、その後の調査により「F3」と発表し直されました。
雷のメカニズム
雷が発生する状況は、代表的なパターンとして、2つあります。
1つは、「熱雷」です。
夏に起こる雷の代表的なものですが、強い日差しで温められた地表が、上昇気流となって雷の原因となる積乱雲を生み出します。蒸し暑く、風が弱い日の午後から、夕方にかけて発生しやすいと言われています。
もう1つは「界雷」です。
寒冷前線の通過によって、地表の暖気が上昇気流となり、これが上空の寒気と入り乱れて大気の状態が不安定になると、さらに激しい上昇気流となって、積乱雲を作り出します。
界雷は、前線に起因するので、季節や時間に関係なく、真夜中や明け方でも発生します。
その他には、「渦雷」があります。
発達した低気圧や、台風の中心付近で起こる強い上昇気流が生む積乱雲によって発生する雷です。
実際には、これらの要因が複合的に重なり合って発生しているケースが多いです。夏な激しい雷雨は、熱雷と界雷の両方が要因となって起きているものが多く、「熱界雷」と呼ばれるようです。
雷の怖さ
雷が私たちの生活に与える被害として、落雷が原因の火災や山火事、あるいは、人への直撃といったものが、頭に浮かびます。
こうした被害はニュースでも取り上げられるので、私たちの印象に残りやすいですが、実は意外に多い被害がパソコンなどの電子機器のトラブルです。
落雷の後、突然電源が入らなくなったり保存していた大切なデータがすべて消えてしまったりすることがあります。
これは、雷の強い電流が流れて、電子部品がショートしてしまうのが原因です。電子機器に囲まれる現在、雷の脅威は増大しつつあります。
雷が発生するしくみ
雷が発生する仕組みを紹介します。
まず、地表や海面から湿った空気が上昇すると上空で水蒸気となり、これが凝結して水滴になります。
積乱雲の内部は、マイナス10℃以下と非常に冷たく、水滴はやがて氷晶になります。氷晶のなかには、周囲の水蒸気をさらに吸収してあられや雪になるものもあります。
その氷晶とあられは、それぞれの摩擦によって、プラスとマイナスに帯電し、この積乱雲の電荷に対応して地上はプラスに帯電していきます。
やがて対地放電、つまりは落雷となります。
ちなみに、大きく背の高い積乱雲の方が、氷晶やあられを蓄えている量も多く、大きな雷が起こりやすいです。
雲の内部が、マイナス20℃より冷えると、氷晶が作られる量は一層多くなります。
そのため、熱帯で発生する積乱雲は、気温が高いため、雷は発生しにくいと言われます。
寒波のメカニズム
寒波とは一体何でしょうか?
実は、気温が何℃以下になれば、寒波に該当するといった定義はなく、一般的には、「寒波は空気が広い範囲に流れ出して、気温が急激に下がる現象」を、いいます。
日本付近では、冬期、北西の季節風がシベリアの寒気を運んできます。
寒波の襲来は、「寒気団の南下」「歓喜のはんらん」と言われます。
天気図を見ると、発達した大陸の高血圧が、低気圧の通過後に大きく張り出していることがわかります。
氷点下35℃から40℃といった強い換気が上空にやって来ると、日本海岸は大雪、雪があまり降らない太平洋側も一段と冷え込みます。
季節風の他にも、一年を通して吹いている、西寄りの風、偏西風の存在も大きく関係しているようです。
偏西風は、南北に蛇行しながら吹いており、北に張り出している部分をリッジ、南に張り出している部分をトラフといいいます。
特に、日本上空でトラフの蛇行が激しい時、いわゆる「V字トラフ」が形成されると、その流れに乗ってシベリアからの冷たい換気が次々にやって来て、厳しい寒さになります。
寒波に襲われる年は、日本付近に、V字型トラフが形成されていたり、トラフから、ちぎれた寒気の渦があったりするケースが多いようです。
北極振動について
北極振動とは、北極と北半球の中緯度との間で、気圧が変動する現象です。
冬を中心に顕著に現れることがあります。北極付近が低気圧になると、中緯度は高気圧になり、反対に、北極付近が高気圧になると、中緯度が低気圧になり、シーソーのように気圧が変動します。
変動幅が大きくなり、北極付近に非常に強い寒気が集まり、低気圧になると、南の強い暖気との間にジェット気流が吹いて、寒気の南下を阻止します。
日本や欧州など中緯度は高気圧になり、強い寒気が放出されると、中緯度は低気圧になり、日本や欧州は寒波や大雪に見舞われます。
どちらかのパターンが出現すると、数週間ほど持続し、災害が発生します。
振動と名がついているので、周期があるように思われますが、特定の周期はなく、予測するのは難しいようで、その要因なども解明されていなようです。
日本で発生した主な寒波豪雪
ここで、日本で発生した大きな寒波豪雪被害をご紹介します。
「平成18年の豪雪」
2005年12月から2006年1月上旬、福井県上空5000m付近で、氷点下36度前後という、非常に強い寒気が日本に南下しました。
強い冬型の気圧配置となったことから、日本海側では、記録的な降雪量となりました。
さらに1月中旬以降も、日本海側の山沿いを中心にたびたび大き雪が降りました。
この大雪によって、積雪を観測する全国339地点のうち、23地点で積雪の最大記録を更新しました。
12月としての最大記録を106地点で、1月としての最大記録を54地点で2月としての最大記録を18地点で、更新し、気象庁はこれを「平成18年豪雪」と命名しました。
この大雪により、高齢者を中心に、雪下ろし中の事故などの被害が各地で続出し、羽越本線砂越駅から北余目駅間で、特急「いなほ14号」が脱線事故を起こしたり、秋田新幹線が立ち往生し、終日運休するなど、交通機関にも大きな影響を与えました。
「平成23年豪雪」
2010年12月終わりから2011年1月末にかけて、シベリアから日本付近に、強い寒気が断続的に流れ込み、冬型の気圧配置となって、ほとんど全国的に気温が低くなりました。
その傾向は、西・南ほど強くて、西日本や沖縄・奄美では、1月の気温が極端に低下しました。
しかし、その後、冬型の気圧配置は長続きしませんでした。
12月終わりから1月末にかけては、北陸や山陰を中心に、日本海側の広い範囲で、降雪量も多くなり、山沿いでは3mを超える積雪もありました。
その結果、アメダスを含む、22地点で積雪の深さが、観測史上1位を更新し、特に12月末には、西日本の日本海側を中心に、大雪が降りました。
さらに、北・東日本の日本海側では、12月末から1月末にかけて高範囲で大雪となりましたが、平年の降雪量が多い2月が少なかったため、冬全体の降雪量としては、数字的には多くはなりませんでした。
夏の猛暑のメカニズム
日本の暑い夏は、「太平洋高気圧」とともにやって来ます。
その中心は、ハワイ付近に位置していますが、夏になると高気圧の西端が発達して、日本列島をすっぽりと覆いつくします。
天気図では広がった部分が、「鯉の尾」のように見えます。この形が現れた夏は、全国的に猛暑になると言われています。
太平洋高気圧は、10日程度の周期で勢力の強弱が見られますが、梅雨明け直後は一般的に勢力が強いのが特徴で、「梅雨明け十日」といって、暑い晴天が続きます。
高気圧の仕組み
暑さの源は、高気圧です。
高気圧は、その中心から風を四方に向けて時計回りに吹き出していますが、吹き出した空気を補うように、上空からの空気が下降気流となって降りてきます。
低気圧は、その反対で、その中心に向けて地表の風が反時計回りに吹き込んでいます。中心に集まった空気は、上昇気流となって、上空で雲を作り、雨を降らせます。
高気圧は、気温分布の特徴や移動の速さによって3つに分類されます。
「温暖高気圧」
閉じた円形の等圧線を、上空5km以上、高いものでは12kmにまで描くことができます。
移動の動きは遅く、高層の空気が大規模な下降気流となって、気圧の高い下層へ下りてくるときに、空気は圧縮されて気温が上がります。
周囲に比べて中心ほど暖かいのが特徴です。
「寒冷高気圧」
下層に冷たく重たい空気が貯まってできます。高気圧全体が低温で、高さはせいぜい2kmほどで、そしてほとんど停滞します。
冬に大陸で発達するシベリア高気圧がその代表です。
「移動性高気圧」
温帯低気圧と交互になって現れ、1日に約1000kmの速さで東に進みます。
日本では、春や秋に3から4日ごとに通過して、晴天をもたらします。
日本で発生した近年の猛暑
夏の猛暑が私たちの生活に与える影響は大きいです。あまりの暑さは、熱中症を誘発するだけでなく、農作物の育成にとってもダメージが大きい。
近年で特に暑かったのは、2010年の夏でしたので、詳しく紹介をしていきます。
2010年、6月から8月で、日本全体の平均気温の平年差は、+1.64℃でした。
熊谷、富山、大分など11地点で夏の猛暑日最大日数が更新され、11地点で、真夏日の最大日数を更新しました。また、48地点で夏の日最低気温25℃以上の最大日数も更新されました。
この猛暑による熱中症で、医療機関位搬送された人は、特に被害が多かった7月から9月の間で、全国5万3843人、うち167人が搬送直後に死亡しました。
搬送者は、前年同期の4.15倍で、その半数近くは高齢者でした。
被害は、農作物や海産物などにも及び、生産量や品質が落ちた上に、市場価格が高騰しました。
これらの猛暑の要因として、3つの大気の流れが関係していました。
1つ目として、北半球中緯度の対流圏の気温が、1979年以降の夏で、最も高かったことです。
春のエルニーニョ現象終了後の昇温効果と、夏のラニャーニャ現象の昇温効果が重なったことがその原因とされています。
2つ目に、日本付近が勢力の強い太平洋高気圧の影響を受けやすかったことが挙げられます。
日本付近の亜熱帯ジェット気流が平年よりも北寄りに位置したことで、上層のチベット高気圧が張り出し、背の高い高気圧が形成されたと考えられます。
特に8月後半から9月はじめでは、南シナ海北部から、フィリピン北東の対流活動が活発になり、太平洋高気圧を強めたと考えられています。
最後に3つ目は、冷涼なオホーツク海高気圧の影響をほとんど受けなかったという理由があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。自然災害で怖いのは、地震や津波、台風等だけではありません。
猛暑でも熱中症で死亡するケースも多く、最近では、異常気象の驚異も甘く見てはいけない状況になってきています。
最初にお伝えしたように、最終的に自分の身を守るのは、それら災害に対する知識です。
これを気に、自分に出来ることを再確認していただけたらと思います。
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