私たちが支払っている保険料は、サラリーマンにとっては年末調整時に、個人事業主にとっては確定申告時に、税金面におけるメリットを受けることができます。
また、個人事業主にとっては、その保険料を経費にできるという場合もあります。
経費として算入できるかどうかは、個人事業主にとっては、大きな問題で、どういう場合に、経費にできるかを把握しておくことは、とても大切なことです。
ここでは、たくさんある保険のうち、火災保険について詳しく解説していきましょう。
個人事業主の皆様、毎年の申告を正しく行うためにも、ぜひチェックしてみてください。
火災保険を経費計上できる条件
ずばり、個人事業主か加入する保険のうち、経費にできる保険とそうでない保険の違いは、「事業を継続するために必要であるかどうか」です。
しかし、判断がつきにくいケースも多々あります。
例えば、自宅を事務所に使用している場合、仕事に自家用車を使用している場合など。
このような場合は、経費を事業用とプライベートに分ける必要があり、「家事按分」といいます。
経費と認められるのは、事業で使用している部分のみですので、どのくらいを事業に使っているか確認する必要があります。
以下、具体的に経費にできる場合、そうでない場合をまとめてみました。
経費計上できる保険
前述した通り、経費にできる保険は、事業を継続するために必要な保険料です。
「火災保険」
火災保険については、事業に関係する火災保険料は経費となります。
自宅を事務所として使っている場合は、保険料の一部を経費にすることが可能で、自宅の中でどの面積分を事務所として使っているか、確認することで算出していきます。
しかし、原則としてプライベートな部分においては、経費とはならないばかりか、保険料控除の対象ともならないので、注意が必要となります。
火災保険とセットで地震保険に加入している場合も、事業で使用している部分に関しては、経費計上が可能です。
火災保険と違う点は、プライベートにあたる自宅部分の保険料が、一定額控除することが可能な点です。
地震保険料は、平成19年1月税制改正によって、控除の対象となったため、確定申告時などで控除を受けることができます。
「自動車保険」
事業で自動車を使用している場合は、経費として計上できます。
運送業などは、全て経費計上できます。
難しいのは、事業とプライベートの両方で、自家用車を使用している場合です。
この場合は、使用回数や走行距離を測ることで、経費として計上できる分を算出していきます。
「従業員の傷害保険、生命保険、社会保険」
従業員を被保険者として加入する保険がいくつかあります。
その目的は、主に福利厚生です。
業務中の災害や、通勤途中の事故に備える保険は、一旦事業主が受け取り、見舞金として従業員に支払った場合も、福利厚生費として処理することが可能です。
福利厚生として、生命保険に加入するかどうかは、経営者の判断によりますが、社会保険については、一定のルールのもと加入が義務付けられています。
会社が保険料の一部を負担することが、法律で定められており、休職中の従業員の分についても、支払っていく必要があります。
これらは、法定福利費と呼び、健康保険、介護保険、厚生年金保険などの、社会保険の他にも、労災保険や雇用保険も含まれ、事業主が負担したものについては、経費として計上が可能です。
経費計上できない保険
経費にできない保険については、事業の継続とは関係のないケースについては、経費として認められません。
そもそも事業主が健康で、事業を行っていかないと事業は成り立ちませんが、事業主や専従者のために加入した保険は、事業に直接かかわるものとみなされず、個人的なものとしてみなされます。
「事業主や専従者の生命保険料、傷害保険料」
事業主本人や、その家族を対象とする生命保険は、経費として計上できません。
理由は先ほどお伝えした通り、事業の継続のためよりは、個人のものとしてみなされるためです。
傷害保険も同様に、事業継続のための必要経費というより、プライベートな費用としてみなされます。
ただし、個人事業主の場合は、生命保険料控除として所得税の控除が受けられます。
「事業主や専従者の国民健康保険料や国民年金保険料」
個人事業主や専従者は、社会保険に加入できないため、国民年金と国民健康保険に加入する必要があります。
これらは、経費として認められません。
更に、国民健康保険には扶養家族という概念がなく、20歳以上の家族は、それぞれ自分で保険料を支払うことになります。
その分は、確定申告時に社会保険料控除として、所得控除を受けることができます。
火災保険を経費計上する注意点
火災保険については、一部他の保険と異なり、経費計上にする際に注意すべき点があります。
火災保険には、長期契約というものがあり、数年分の保険料を一括で支払うケースです。
この場合注意すべき点は、保険料の仕訳についてです。
長期契約の場合、火災保険料は支払った年に、支払った分だけを経費申告するのではなく、毎年、その年に対応する分の保険料を、少しずつ計上していくことになります。
例えば、10年契約で火災保険に加入し、保険料20万円を一括で支払った場合、年度内に経費計上できるのは、1年分の保険料に当たる2万円ということです。
次年度からも、契約満了の年まで毎年2万円ずつ、経費計上していくことになります。
まとめ
事業主は利益を残すために、経費計上できるものは、できるだけ多く計上したいと考えます。
しかし、事業の経費とプライベートの出費をあいまいにし、経費を過剰に計上しすぎて、税金を少なく申告してしまうと、税務署からの指摘がある場合もあります。
納税額が不足している指摘されると、ペナルティがある他、加算税の徴収が課されるケースもあります。
保険料については、一部複雑な点もありますが、基本的な考え方をしっかり知ることで、正しい納税も可能になります。
この機会に、ご自身の経費の仕訳が正しかどうか、チェックしてみるのもいいかもしれません。
コメント