どろどろに溶けた高温のマグマが、一気に噴出する、その様を見ると、自然の恐ろしさを改めて実感します。
いつ起こるのか、どこで起こるのかわからない火山の噴火ですが、専門家がさまざまな角度からその発生について研究を続けています。
私たちは、有事の際、被害を最小限に抑えるため、どうやって噴火が起きるのか、日本のどこに火山があり、どの程度危険なのか、まずは知ることから始めなければいけません。
生活が一変する!?火山噴火の怖さと被害
火山の噴火はめったに起きる災害ではありませんが、その被害はというと、私たちの生活へはもちろん、農作物、建物など、様々なところに影響が出ます。
その怖さと被害の種類を紹介します。
噴火の被害その1〜交通への被害
火山が噴火して、降灰すると、路面が滑りやすく、信号機も故障するので、運転が困難になります。
高速道路が通行不能になり、物流が滞るため、食料品が高騰し、工場の搬入出も不可能になるため、生産性の低下が起きることになります。
また、鉄道では、新幹線や、私鉄がストップし、加えて航空便も欠航してしまいます。
火山灰はその噴火した火山の周りだけではなく、風にのって広い範囲にわたって降り積もる可能性があるので、多くの地域で交通障害が発生します。
噴火の被害その2〜人体への被害
火山灰は、鼻や口から入ると鼻水や喉の痛み、気管支に炎症を引き起こします。目に入ると、角膜や結膜を傷つけ、痛みや光の眩しさで目を開けていられなくなるという症状が出ます。
皮膚の弱い人は、灰がつくことで、炎症を起こしたり、かゆみが出たりします。
こうした患者が増え、病院に殺到するため、医療機関が混雑する可能性があります。
また、降灰が続く限り、運動場やプールでは、灰を除去しない限り、屋外での激しい運動は避けたほうがいいです。
これは、学生だけでなく、成人にとっても好ましくない状況で、特に、運動を必要する時期にある学生にとっては、好ましくない環境です。
噴火の被害その3〜ライフラインへの被害
降灰量が、浄水施設の浄化能力を上回ると、きれいな水の供給ができなくなり、同じ理由から、下水処理機も低下することになります。
また、電気系統は、火山灰に弱く、家庭用の電子機器が故障し、送電がストップする可能性もあります。
コンピュータの不調は、オンラインシステムの不具合へと連鎖する可能性もあります。
噴火の被害その4〜第一次産業への被害
成長途中の農作物に灰がつくと、光合成能力の低下により生育の停滞や、草勢低下、果実肥大の遅延、枯死が発生する場合がります。
飼料作物にも影響があり、灰の付着した飼料を食べた家畜は、食欲減退や下痢症状を引き起こします。
こうした食料生産量の低下は、中・長期的に、私たちの社会生活に影響を与えます。
噴火の被害その5〜建物への被害
火山灰を掃くと、細かい火山灰が空気中に舞い上がります。そのため、清掃の際は、少量の水をかけるのが鉄則です。
火山灰は、その重みで屋根を潰すこともあります。また、道路の溝や雨樋などに入り、水を含んだ火山灰は、漆喰のように固まり、除去が難しくなります。
もし…富士山が噴火したら
富士山が最後に大噴火したのは、約300年前、1707年のことです。
もしも現代その当時の噴火が起こっていたら、富士山に、ほど近い地域では、火砕流や泥流に市街地が飲み込まれ、富士山から離れている地域でも、火山灰で生活が脅かされる事態が容易に想像できます。
首都圏の昨日は麻痺し、医療位の増大、農作物への影響など、被害は膨大になることでしょう。
特に、梅雨時期に噴火が起きると、灰を含んだ黒い酸性の雨が建物にダメージを与え、水はけの悪い灰が土石流を起こしやすくなります。
このような最悪のケースの場合、内閣府が試算している被害額は、なんと2兆5000億円と言われます。
富士山は活火山?休火山?死火山?
実は、休火山、死火山という単語は、気象庁のホームページで確認すると、
年代測定法の進歩により火山の過去の活動が明らかになり、火山の寿命は長く、歴史時代の噴火活動の有無だけで分類することは意味がないので、近年は休火山や死火山という分類はなされていません。
【引用:気象庁】よくある質問 火山について
と記載しており、噴火警報・火口周辺警報・噴火予報の観点では「休火山、死火山」は使われなくなりました。
気象庁が発表している富士山の活動状況が「噴火レベル1、活火山であることに留意」となっており、高周波地震、深部低周波地震などの観測結果、噴火の兆候は見られないものの、富士山が火山であることを忘れたはいけない、という状況になっています。
こちらの気象庁のページから、富士山の状況が確認できます。
⇒【気象庁】富士山の活動状況
また、こちらの気象庁のページでは、全国の火山の活動状況が確認できますので、登山家の方は登山前に必ず確認しましょう。
⇒【気象庁】火山登山者向けの情報提供ページ(全国)
火山のメカニズム
火山は、地球内部のマグマが地表に噴き出すことで形作られる地形のことです。
火山のメカニズムを知るために、マグマがどのように作られ、どのように地下深くから上昇し、地表のどんな場所から出てくるかを
紹介します。
マグマは、地表のどこにでも噴出するわけではありません。「海溝沿い」「海嶺」「ホットスポット」の3カ所から噴出します。
「海溝沿い」は、一方のプレートが、もう一方のプレートの下に沈み込む場所です。
海洋プレートが、マントルの中へ深く沈み込んでいくと、海洋プレートから水分などがしみこんで、マントルと混ざります。マントルは、水と混ざることで融点が下がるので、その一部が溶けてマグマになり、そのマグマが地上に噴出すると、火山ができます。
「海嶺」は、2つの海洋プレートの境界から、マグマが噴出する場所で、長い山脈が形作られます。
海底には、全長約6万5000kmの長大な山脈があり、これを中央海嶺と呼びます。また、ここでは、海水に触れたマグマは冷え固まって、暑い岩の板であるプレートが誕生します。形成されたプレートは、海嶺を中心に反対方向へと動いていきます。
「ホットスポット」は、マントル深部の熱源が、上部のマントルを溶かして、マグマが発生します。
このマグマが、プレートを突き破り、地上へ噴出した場所が火山となります。ホットスポット自体は、地中の同じ場所に有り続けますが、上部のプレートは移動しているので、結果として火山の列ができます。
マグマの一生
地球の内部は、いくつかの層になっています。中心である核と、表面である地殻の間の部分をマントルといいます。マントルは、岩石の層で、この岩石が溶けたものがマグマとなります。
岩石が溶ける温度は、圧力とも関係します。圧力が大きくなればなるほど、溶け出す温度も高くなります。
地球は深く潜れば潜るほど圧力も高く高温になりますが、通常は、地球内部の温度が岩石の融解温度に達することはありません。
しかしそれでも、次の3つの条件の時に、岩石が溶け始め、マグマが生成されます。
第一に、何らかの原因で、マントルの温度が一部上昇し、融解温度を越えた場合です。第二は、減圧融解という現象で、深い場所にあった岩石がその温度をほぼ保ったまま、浅い場所まで移動した場合に発生します。
この時、浅い場所では、圧力が低く、それに伴って、融解温度が低くなるので、上昇してきた岩石は溶け始めます。
第三は、地中深くの岩石が水を含んだ場合で、マントルの岩石に水などの揮発性成分が加わった場合、融解温度が停止するために、マグマが作られることがあります。
地中で作られたマグマは、ある一定の高さまで地表に向かって上昇します。これは、マグマが岩石であった時よりも体積が増え、密度が小さくなるからです。
地球の岩石は、深い所から、浅いところに向かって密度が小さくなるように積み重なっていきます。
マグマは、自分と密度が近い岩石があるところまで上がって、そこにとどまります。
一定量が溜まった場所をマグマ溜まりと言って、溜まったマグマが再び上昇を始めて火山の噴火に至ります。
火山噴火の3つの分類
火山の噴火には3つの分類があります。
噴火の仕方を決めるマグマの形成や温度、ガスの量、マグマがマグマ溜りから上昇する道の大きさなどが、火山ごと、噴火ごとに異なるためと
えられています。
噴火の直接の引き金となるマグマと水蒸気の関係から、マグマ爆発、水蒸気爆発、マグマ水蒸気爆発の3種類に分けられます。
マグマ爆発
マグマが直接地上に噴出する噴火のことをマグマ爆発といいます。マグマの粘性の違いで、様々な形をとります。
水蒸気爆発
マグマが放出されないタイプの噴火をいいます。比較的規模が小さいことが多く、大きな噴火に先立って起こりやすいです。
マグマ水蒸気爆発
マグマ爆発と水蒸気爆発の両方が起きるタイプです。
火山の噴火に伴う災害
ひとたび噴火が起きると噴煙やマグマなど、様々なものが火山から出てきます。
これら噴火で出てくるものを火山噴出物と総称します。この噴出物によって起きる災害をその種類ごとに紹介していきます。
火山灰
火山灰は、太陽光を遮るので、日中でも電気をつけなければならないほど暗くなります。
こうした視界不良に加えて、路面に堆積した火山灰がタイヤと道路の間に滑りやすい面を作り、スリップしやすくなるため、運転が困難になります。
交通面に与える影響は、自動車だけにとどまらず、航空機にも被害が出てきます。
また、ライフラインへのダメージも大きく、電気、ガスのストップ、上水道が濁ることがあります。
そして、特に注意が必要になるのは、健康被害です。灰が鼻や口から入ると、鼻水が出て喉に傷ができます。
ガラス質の先が尖った灰が目に入ると、眼球の表面にある角膜や結膜を傷つけた結果、角膜剥離や結膜炎といった症状が発生することもあり、外出時はメガネやマスクでの防備が欠かせなくなります。
溶岩流
700から1200℃と非常に高温で、粘性が低く、さらさらと流れる玄武岩の溶岩流は、その速さは時速20km程度になります。
移動速度は速くないので、避難が容易で、人命が失われるほどの災害になることはまれですが、巻き込まれた建築物が焼失、埋没する被害が発生します。
火砕流・火砕サージ
火砕流は、溶岩の破片、火山ガス、火山灰が一団となって、高速で山の斜面を流れる現象をいいます。
木や建物を根こそぎなぎ倒し、元の地面を侵食するほどの破壊力があります。
火砕流上部の雲の部分は、高温の火山灰とガスからなり、火砕流本体から分離して、火砕サージとなることがあります。
火砕サージは、マグマと水が反応して、爆発的に発生するタイプもあります。
火砕流と違って、地形的な障壁も乗り越えて進むので、退避が難しく、非常に危険で、なおかつ高温であるため、建築物や植物に着火することがあります。
火砕流、火砕サージで特筆すべきは、その移動速度の速さで、時速約100kmにもなります。
火山ガス
火山ガスの主成分は水蒸気で、その他、二酸化炭素や硫化水素、二酸化硫黄、塩化水素も含みます。
硫化水素は毒性が強く、二酸化炭素は、窒息により死に至る場合もあります。二酸化硫黄は、水と反応すると、硫酸になり、腐食性を持つようになります。
これらの成分は、ガス源と地上の距離や帯水層の有無で変わり、噴火時でなく、活動が活発な火山で、常時発生することもあります。
空気より重い火山ガスは、窪地などで濃度が高くなります。また、風に流されるため、風下でも注意が必要です。吸った動物や人間が、その場で死亡することもあります。
まとめ
富士山が噴火した際のシュミレーションから、火山噴火のメカニズム、そして災害の種類を紹介してきました。
過去にも、火山が噴火して、多数の死者が出たケースもあります。
自分が住んでいる場所に火山はあるのか、そしてそれはどの程度危険なのか、そのような知識を深めて、万が一の時に備えたいものです。
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