近年大規模な自然災害が増加し、日本国内での防災意識が高まる中、有事の際に役に立てるように、防災の知識や技能を取得したいという人が多くなりました。
その中の一つに「防災士」という資格があります。
最近耳にする機会が増え、その資格取得者が急速に増えています。
「防災士」はどのように役立つ資格なのか、どうやったら資格取得できるのか、を紹介します。
防災士ってどんな資格?
「防災士」は近年自然災害が増えるとともに、2018年12月末日時点で、161,650名と、その資格取得者も急激に増えています。
「防災士」は日本防災士機構が認定を行いますが、以下の基本理念を掲げて、活動をしています。
自助:自分の命は自分で守る
自分の安全は自分で守ることが防災の基本とし、自分の身を守るために、日頃から身の回りの備えをし、防災・減災に関する知識と技能を習得し、その後のスキルアップに努めることを目指しています。
共助:地域・職場で助け合い、被害拡大を防ぐ
消防や警察等の公的な救助活動を受けるまでに、災害が起こった場合の初期消火、避難誘導など、地域や職場の人達と協力して行う際、声かけ役となり、リーダーシップを発揮することを目指しています。
協働:市民、企業、自治体、防災機関等が協力して活動する
災害に強いまちづくりをすすめるために、日頃から、行政をはじめ、防災・減災に関わる団体と連携し、防災訓練などの活動をおこないます。災害が発生したときは、それぞれが可能な範囲で被災地救援、支援活動に取り組むことを目指しています。
これらの3つ理念を念頭に、防災に関する十分な意識と知識を持ち、技能を習得した方が防災士として活動しています。
防災士制度発足のきっかけ
「防災士」は、民間人の防災リーダーを養成する目的で創設されました。
この制度が発足したきっかけは、1995年1月に起きた阪神・淡路大震災です。
その後、防災問題研究所、防災情報機構が発足し、2002年に日本防災士機構が内閣府に認証されました。
2003年9月には、第1回目となる防災士資格取得試験を実施。
2018年12月末現在での防災士認定登録者数は、累計161,650名と年々増加しています。
大災害の教訓と、その伝承のため、また新しい防災への取り組みをあくまで民間の力で進めていくことがこの制度の趣旨となっています。
今では、全国の地方自治体や国立大学等の教育機関、及び民間研修期間では、積極的に防災士の養成の取り組みが進められています。
そして、それぞれに地域において、自主防災組織や小中学校、各事業所などで防災士の配置と活用の動きが広がっており、今後も防災士の活躍に期待が持てそうです。
防災士を実務で役立たせるには?
防災士の基本理念にもあるように、防災士に期待されることは、自分の身は自分で守るということです。
それは、災害で命を失ったり、大けがをしてしまったら、家族や隣人を助けたり、防災士としての活動をすることも出来ないからです。
それを基本において、平常時、災害時と期待される役割があります。
平常時の活動について
「自助」という理念のもと、自分と家族を守るために、自分の家の耐震補強、家具の固定、備蓄といった備えを進めていきます。
そしてそれを、親戚や、友人知人に広めていき、地域や職場での防災啓蒙活動を実施していきます。
防災士は、まず自分が動き、そして周囲の人を動かすように努めていきます。
防災士のリーダーシップのもと、防災講演会や、災害訓練、避難所訓練を行い、自主防災組織や消防団の活動にも積極的に参加をしていきます。
災害時の活動について
日本防災士機構のホームページを見ると、東日本大震災や熊本地震おいて防災士のリーダーシップによって被災者の命が助かったり、避難所の開設がスムーズに運んだりと、多くの好事例が報告されているようです。
防災士が実際に被災したら、その場その場で自分の身を守り、避難誘導、初期消火、そして救出救助の活動を行っていきます。
防災士の権利や義務について
先ほどから紹介しているように、防災士はあくまで民間資格です。
ですので、防災士の資格取得によって、特定の権利や義務が発生することはありませんし、受験や就職で役立つようなことはあまりありません。
あくまで、自発的な防災ボランティア活動を行うことを期待された資格と言えます。
しかし現状では、多くの地方公共団体が予算を計上して、防災士を養成する動きが活発です。
これは、防災士の社会的評価が高まっていることを証明しており、そうした社会の要請を受け、高い意識と使命感をもって活動することを期待されています。
防災士になるには?
防災士の資格を取得するには、一般的な方法と、消防・警察の現職または退職者の方が、「特例制度」を使って取得する方法があります。
ここでは、一般的な取得方法についてご紹介していきます。
資格取得までのステップ①
まず、「防災士養成研修講座」を受講して、「研修履修証明」を取得する必要があります。
この講座では、研修期間が実施する「特設会場にて、専門家講師の講義による12講座以上の受講」、もしくは、「研修レポートの提出」による研修カリキュラムの受講が必要となります。
資格取得までのステップ②
次に、「防災士資格取得試験」を受験し、合格しなければいけません。
受験料3,000円が必要です。
ステップ①での講座をしっかり受講すれば、試験は合格できるようですが、万が一不合格の場合は、再試験を受けることも可能です。
資格取得までのステップ③
最後に、「救急救命講習」を受け、その修了証を取得しなければなりません。
これは、全国の自治体、地域消防署、日本赤十字社などの公的機関、またはそれに準じる団体が主催するじん肺蘇生法やAEDを含む3時間以上の内容となっています。
この、「研修履修証明」「防災士資格取得試験」「救急救命講習」の、3項目を終了した人が日本防災士機構への「防災士認証登録申請」を行うことができます。
そして、この申請を適正に提出した人に、「防災士認定証」「防災士証」が交付されます。
最後に、費用についてですが、防災士研修講座受講料が49,000円の他、試験の受験料、資格認定登録料を含めて、約61,000円かかります。
これらの受講費用ですが、自治体によっては、助成金制度を設けているところもあるようですので、住んでいる地域の自治体に確認をするといいかと思います。
防災士の実際の活動事例
防災士の活動は、万が一の時の活動だけではありません。
自治体をはじめ、地域、大学、企業での防災啓蒙活動を行っています。
また、日本防災士会という団体を作り、会員同士のネットワークを構築して、日々の研鑽を行っています。
愛知県知立市では防災士同士の交流がさかん
市内に在住している防災士たちが、知識向上や交流を目的に情報交換を行い「知立市防災士だより」を発刊しています。
またこの知立市では、平成29年度から防災士資格取得の経費補助を行っています。
他の地域でもこのような補助を行っている可能性もあるので、防災士取得をお考えの方は、お住まいの自治体のホームページを確認してみましょう!
熊本地震後の大学合同によるボランティア活動
東北大学、香川大学、熊本県立大学が合同し、熊本大学学生災害復旧支援団体「熊助組(くますけぐみ)」として熊本でボランティア活動を行っています。
足湯や手芸の体験、食事や部屋清掃ボランティアなどの様々な活動により、被災者に寄り添い楽しみながら、元気を取り戻してもらえるような支援活動を継続して行っています。
精力的に個人で活動する方も
防災士の方の中には、自ら起震車(地震を擬似体験できる振動装置)を購入し、千葉県内の様々な地域、事業所を対象に震度7を体験してもらい、地震の恐ろしさと発生時の対応方法を啓蒙しています。
また、平成29年7月九州北部豪雨で熊本県朝倉地域が甚大な被害を受けましたが、被災された方に寄り添い、復旧・復興の力になるため、朝倉市甘木にその支援活動拠点「防災士 朝倉災害支援ボランティア活動センター」を設立した防災士の方など、自ら復興に尽力されています。
「防災士」を実際に資格取得するためには、いくつか乗り越えるべき試験などあるにも関わらず、今もなお受講者数が急増している防災士ですが、増え続ける自然災害に対する意識の高さが理由だと言えます。
今後も増え続けることが予想されますし、自然災害は世界規模で発生しているので、日本の防災士が海外に波及することもありえるかもしれません。
私たちの身の回りにも防災士の資格をもった会員がいる可能性もあります。
今回紹介した、防災士について、その資格を知ることも防災意識を高めることにも繋がりますので、ぜひとも、日本防災士機構のホームページを見てみることをお勧めします。
防災士とともに被災地復興に1番求められる資格があります
防災士は、発災前の防災活動から、発災時の避難誘導・救命活動、復興時のボランティアなど様々な場面で活躍が期待される資格です。
ですが、被災地では人員不足や経験不足により、復興での対応が遅れている箇所があります。
公助という言葉をご存知でしょうか?
防災士の理念にもありました「自助」と「共助」、さらに「公助」を加えることによって復興のスピードが上がっていきます。
「公助」というのは、国民の生命・財産の安全を守るため国や地方公共団体などが公的支援を行うことです。
「自助」「共助」に加え「公助」、この3つが連携することにより、被災地での早期復旧・復興を果たすことができるのです。
ですが、被災地では「公助」を行うための職員も被災者であったり、マニュアルはあっても実際に実行するのは初めての職員が多く、これらの影響により公的支援が追いついていない状況があります。
そのため、「公助」を行うための支援が、早い段階で必要となりますが、この支援は公的機関のみでしか行われないのが現状です。
住家被害認定・罹災証明証を利用した支援策
大規模災害後に、被災者の方が元の生活に戻るために一番必要なのが「住居」です。
ニュースなどでご覧になった方もいると思いますが、東日本大震災や熊本地震で住居を失い、現在でも仮設住宅に住まわている方がいます。
様々な要因が考えられますが、ひとつの原因として公的支援を受けるため「住家被害認定」「罹災証明証の発行」の対応が遅れていることが考えられます。
この「住家被害認定」「罹災証明証の発行」の支援を行うため、当協会では熊本市、大阪市、兵庫県、日本防災士機構などと連携し、民間で初めて「住家被害認定」「罹災証明証の発行」を行うことができるよう活動しています。
また、当協会が運営する「自然災害調査士」は、家屋の調査・診断を行うことができる民間資格で、この調査士が入口となり「公助」を行うことができる資格を習得可能(現在準備中)です。
自然災害調査士の役割
東日本大震災、熊本地震などの地震、集中豪雨、大雪など大規模な自然災害により、被災した地域では復旧もままならない状態で、生活の再建まで時間がかかってているのが現状です。
また、生活再建の中でも一番スピードが求められるが、「罹災証明書」の発行です。
自然災害により受けた家屋の被害の証明書で、自治体の支援を受けるためには欠かせない書類です。
ですが、これを発行する側の自治体も被災者ですし、初めての発行業務に就く方が多いのでスムーズ発行できない場合が多くあります。
当協会では、これからも発生する可能性のある大規模災害に向けて、被災者支援のため「自然災害調査士」を通し民間と行政の連携からなる罹災証明書の発行を目指し活動中です。
これからも起こるであろう自然災害被害に、「公助」を行うことができる唯一の民間団体を目指しています。
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