災害心理学とは?知っておくと役に立つ2つの具体例を紹介します

自然災害

災害心理学とは、災害に対する人間の心理的な反応や行動など、災害と人間心理の関係を研究したものです。

このような研究の目的は、第一は災害の予防、そして人間的な要因による二次被害拡大の防止でしょう。

物的な備えに合わせて、災害への心構えを知るためにも、ぜひ災害心理学についても知識として学んでいただけたらと思います。

災害心理学とは

災害心理学とは、心理学の中江も、基礎心理学の知識や技法を活かした、「応用心理学」と呼ばれている、比較的新しい分野の1つです。

この災害心理学は、1995年の阪神・淡路大震災以降、日本ではその研究領域や研究方法が大きく拡大したとされています。

災害に伴う肉親や家族、知人との死別や、家や職場の倒壊といった個人的な喪失、非日常的な生活などが原因で、精神的ダメージや負担を感じる人も少なくありません。

また、災害が発生してからある程度日にちが経っても、なかなか恐怖や不安がぬぐい切れない方も少なくないようです。

このような状態のことを、心的外傷(トラウマ)とよびます。さらに数ヶ月経っても、突然つらい記憶が蘇ったり、緊張が取れなかったりするようであれば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に陥っている可能性もあります。

こういった災害が原因で起こる、心理的・身体的な変化やこれらを軽減させるために必要な対処法、トラウマやPTSDに関しての研究なども、災害心理学の領域の一つです。

災害心理学の知識を少しでも学び、いざ災害が起きたときに、的確な行動ができるようにしておきましょう。

正常化バイアス

あなたは、地震や台風などが発生した時、どんなことを思うでしょうか?

どんなに地震や台風に関する悲惨なニュースが流れていようとも、自分で気を付けようと思っていたとしても、ほとんどの人が、「まだ大丈夫」「みんないるから大丈夫」と考えてしまうでしょう。

このような心理状況を、「正常性バイアス」いいます。

人間は、実際に危険を知らせるような情報を見聞きしたり、自分の身体に、異常が起きているかもしれない症状が感じられても、「自分にそんなことができるはずがない」と正常であるべきバイアス(偏り)がかかってしまい、危機感をなくしてしまう傾向にあります。

そもそも、この「正常性バイアス」は、もともと人間が日常生活を送る中で、起こる変化や出来事に、過剰なストレスや負担がかからないようにするために、必要な機能といわれます。

しかし、この正常性バイアスが、災害時や緊急時に働いたことで、逃げ遅れて大変な事態に至ったり、被害が拡大したと、指摘する専門家もいます。

災害心理学では、こういった正常性バイアスの心理も学びます。

被災時の心理的影響

正常性バイアスと同様、災害が起きた後の、被災者の精神的なダメージや、ストレス障害が、どのような要因によって起きるか、そして、心理的ダメージを受けると、精神的、身体的にどのような兆候が見られるか、知っておくといいでしょう。

■要因
・被災者自身の個人的喪失(肉親、家など)
・傷ついた家族等への手当て
・悲惨な光景を見ること
・非日常的な慣れない生活
・安全、安心に対しての不安

このようなことが原因で起きる精神的なダメージは、被災した生存者にとっては、ごく自然な反応であることを理解しておく必要があります。

あらかじめ、そのようなことを知っておくことで、助ける側の立場として、生存者に長期間にわたり影響を与える精神的トラウマを、自分のものとして引き受けてしまうという、二次的な犠牲に陥いることも防ぐことができます。

■精神的兆候
・自分を責めたり、相手を非難する状態
・恐怖感のフラッシュバックや悪夢を体験
・無力感、孤独感、疎外感
・情緒不安定、悲しみ、落ち込み、うつ
・集中力欠如、記憶障害

■身体的兆候
・食欲不振
・頭痛、胸痛
・胃痛、吐き気
・アルコール、薬物依存
・悪夢

まとめ

災害現場において、様々な場面に遭遇し、様々な感情が交錯します。

災害心理学の研究によって、災害の予防はもちろん、災害後の被災者の心のケアについても、その研究はなされていくでしょう。

しかし、専門的な学びをしていない私たちでも、「正常性バイアス」など、ちょっとした知識を学ぶだけで、助ける側助けられる側として、いざという時の力になるでしょう。

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