政府は昭和36年に制定された、災害対策基本法にある、避難勧告と支持の整理に着手しました。
毎年災害の度に、逃げ遅れによる犠牲者が絶えないことが大きな理由のようです。
これまで何度も、大規模な災害が発生するたびに、災害情報の改良を重ねてきましたが、いよいよ住民に強く避難行動を促す、抜本的な解決策に乗り出しました。
決定打は、昨年の台風19号の後に行われたアンケートで、住民に避難を促す、「避難勧告」と「避難指示」両方を、正しく認識していた住民がわずか17.7%。
また、5段階の警戒レベルで示された避難情報も、「わかりにくい」と答えた自治体が、68.4%という結果でした。
今年梅雨のシーズンが本格化する前に、試行されるようですので、より詳しくこの変化について確認していきましょう。
避難情報の変更
3月5日閣議決定された、災害対策基本法の改正案の内容は以下の通りです。
これまで水害や土砂災害発生の恐れがある時に、自治体が出す「避難勧告」「避難指示」を一本化し、その名称を「避難指示」に変更。
高齢者や要支援者などに避難を呼びかける「避難準備情報」は、「高齢者等避難」に変更。
また、警戒レベルと行動を促す情報について、レベル5の「災害発生情報」は、「緊急安全確保」へと変更。
激甚化・頻発化する水害・土砂災害に対して、避難対策の強化を目的士とした、災害対策制度の見直しなどを検討することを目的に、「2019年台風第19号を踏まえた避難情報及び広域避難などに関するサブワーキンググループ」の下に設置された、「避難情報などサブワーキンググループ」通称SWGによってその方針が決定されました。
「住民は自らの命は自ら守る」という意識を徹底し、避難行動をとるように努めてほしいというのが、SWGの伝えたいメッセージではあるが、避難情報を住民へ伝える地域の防災体制なども、より強化することも支援していきたいとしています。
今回の避難情報の変更によって、これまで分かりにくいと言われてきた避難情報について、更に混乱が生じることも考えられるが、地域防災一役を担うまでに浸透してきた、消防団、防災士などの自主防災による近隣住民への、分かりやすい避難情報提供や、早期避難を啓蒙する役割が、これまで以上に重要になってくるでしょう。
避難準備名称の変遷
避難方法は、近年の相次ぐ災害を受けて、名称とその内容の変更を繰り返していきました。
今回の変更までの変遷を見ていきましょう。
2004年に統計上最も多い10個の台風が上陸するなど、全国で水害が相次いだことから、翌年の2005年「避難準備(要援護者避難)情報」として、設けられたことが最初になります。
この名称には、高齢者や障害者が避難を始めるだけでなく、一般の住民も、避難の準備を始めるという意味も含まれていました。
しかし、その後の議論において指摘されたのは、「要援護者避難」という名称が、高齢者や障害者のためだけの情報と受け取れられ、自治体が発表しにくい状況になっているというものでした。
その結果、2014年にはその名称が「避難準備情報」に変更されました。
その後、2016年台風による水害で、岩手県岩泉町の高齢者が暮らすグループホームで、入所者9人が死亡するという災害が起きました。
2017年には、「避難準備情報」が「避難準備・高齢者等避難」へと変更されましたが、この災害をきっかけに、高齢者や障害者などが避難を開始するタイミング出ることを強調するという目的も盛り込まれた変更になりました。
今回の変更をうけて、相次ぐ名称変更で戸惑いの声もあります。
また、このような名称の変更が効果的な避難に繋がるのか、疑問だとするデータも発表されました。
そのデータが静岡市における、避難情報が発表された時にどう行動するかのアンケートです。
2018年と2016年、市民500人余りに行われた結果、「すぐ避難する」と答えた人の割合は、「避難指示」では、2016年52ポイント「だったのが、2018年には48ポイントと低下。
「避難勧告」は2018年11ポイントと、17ポイント低下し、「避難準備の情報」は2018年2ポイントで、2ポイント低下しました。
このような結果から、「避難情報慣れ」が起きている可能性は否めないと、市も発表しているようです。
今回の名称変更をどう、自治体が活用していくのか、その動きに私たち住民も注目しておく必要があるでしょう。
まとめ
自然災害が年々増加する中、今年も台風や豪雨の心配は無くなりません。
今回の避難情報の名称変更は、どう国民の意識を変えることができるでしょうか?
重要なことは、私たち自身が情報の受け手という立場から、一歩踏み出す意識を持つことです。
「自分の命は自分で守る」そのための情報を、自ら選び取るという意識改革が求められています。
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