災害ケースマネジメントを制度化へ。過去のケースから詳しく知ろう

大きな災害が起きた際、国では災害対策基本法という制度の下、被災者の救済に当たっています。

その制度のお陰で、復興への道が開けたという人も多いでしょう。

一方、どうしても支援を受けることができない方々がいることも課題の一つとして残っています。

そこで始められたのが、災害ケースマネジメントという、被災者一人ひとりに目を向けた支援策です。

東日本大震災で被災した仙台市が、まず初めに取り組んだことでスタートしましたが、中部地震後の2018年に、鳥取県が初めて条例化を行い、恒久的な仕組みとして取り組みを開始しました。

南海トラフ地震で甚大な被害が予想される中、このような取り組みを、平時から策定しておく動きが広がっています。

いざ自分に災害が降りかかった際に、どのような支援策があるのか知っておく意味でも、災害ケースマネジメントについて、知識を深めておきましょう。

災害ケースマネジメントとは?

災害ケースマネジメントとは、まず被災者一人ひとりから、どのようなことで困っているのか、どういう支援が必要なのか、聞き取りをすることから始まります。

そして、それぞれの状況に合わせた情報を提供することで、きめ細やかな支援を可能とし、被災者の生活再建の早期実現を目指す活動を言います。

被災者が災害によって受ける被害は、住家の被害だけではなく、生業の喪失、健康面の被害、コミュニティの崩壊など、本当に様々で、その影響は被災者ごとで全く異なります。

災害が発生し、要件を満たせば、災害対策基本法という法律が適用にはなりますが、それだけですべての人に救助の手が行き届くわけではありません。

災害対策基本法を補填する意味でも、どうしてこの災害ケースマネジメントが発足したのか、その背景を詳しく解説していきましょう。

背景

東日本大震災が発生して、約10年が経とうとしています。

しかしながら、今もなお様々な理由で、住家を十分に修繕することができずに、不自由な生活を強いられている在宅被害者が多数存在し、必要な福祉的支援を受けることもできていないことが報告されているという事実があります。

本来被災者支援の在り方は、災害によって影響を受けた一人ひとりに、それぞれが抱える事情を踏まえた支援を、全ての人に届けるということです。

しかしどうしても、支援策を受けることができないケースがあることも事実です。

その具体例として、国が発令する災害救助法があります。

この法律では、応急修理制度を利用すると、応急仮設住宅には入居できなくなるなど、被災者を取り巻く環境とは関係なく、形式的に運用しているという問題があります。

このような背景から、災害ケースマネジメントは、複数の民間団体が連携し、また行政とも連携することで、このような形式的な支援ではなく、被災者に寄り添うことで、本当の意味での支援を行うべく作られたものだといえます。

概要

実際に災害ケースマネジメントの主な流れを、ご紹介しましょう。

東日本大震災で被災した仙台市が、最初に取り組んだ災害ケースマネジメントですが、それを条例化して恒久的な仕組みとしたのは、鳥取県が初めてだと言われています。

実際に、中部地震後の2018年に、防災危機管理基本条約を改正する形で、明記されました。

実際に、その時の県の災害ケースマネジメントの流れは、次の通りです。

・センター職員らが被災世帯に訪問し、実態を把握する

・支援が必要と判断した世帯に、ここにプランを作成する

・支援内容に応じて、専門家などで作る生活復興支援チームを派遣する

この支援チームは、建築業やボランティアグループなど多岐にわたりますが、県はもちろん、民間支援グループの協力なしには、運営できない仕組みでもあります。

仙台市における災害ケースマネジメント

今後、多くの市町村によって運用されていくであろう、この災害ケースマネジメントですが、どのような支援を行うのか、より具体的に話をしていきましょう。

初めて災害ケースマネジメントを実施した、仙台市のケースを紹介します。

4つの世帯分類

仙台市の災害ケースマネジメントの例では、まず初めに、仮設住宅に入居している被災者へ直接訪問し、聞き取りを行いました。

生活能力と住まいの再建能力を中心に聞き取りを行い、次の4つに分類を行いました。

・生活再建可能世帯
住まいの再建方針、再建時期が決まっていて、大きな問題なく日常生活を送っている世帯

・日常生活支援世帯
住まいの再建方針、再建時期は決まっているが、心身の健康面に課題があり、日常生活において継続的な支援が必要な世帯

・住まいの再建支援世帯
住まいの再建、再建時期が未定である世帯、資金面、就労、家族関係に課題があり、支援が必要な世帯

・日常生活・住まいの再建支援世帯
住まいの再建に関して課題があり、かつ日常生活においても継続的に支援が必要な世帯

支援策や対応

次に、この4つの世帯ごとに、支援メニューを組み合わせていきました。

・生活再建可能世帯
継続的な状況調査
支援情報の提供
公営住宅入居支援
住宅再建相談支援

・日常生活支援世帯
戸別訪問の実施
健康支援
見守り、生活相談
地域保健福祉サービスによる支援

・住まいの再建支援世帯
個別支援計画による支援
戸別訪問の実施
就労支援の推進
伴走型民間賃貸住宅入居支援

・日常生活・住まいの再建支援世帯
個別支援計画による支援
戸別訪問の実施
健康支援
見守り・生活相談
地域保健福祉サービスによる支援
伴走型民間賃貸住宅入居支援
専任弁護士と連携した相談支援体制構築

このような仙台市の災害ケースマネジメントは、東日本大震災以降の災害において、被災者への支援方法として採用されおり、一部自治体では、条例化の動きも出てきています。

この災害ケースマネジメントを、各自治体で整備していくためには、各専門分野を持つ多様な支援者が連携し、協働する必要があります。

また、国はそうした体制の中心的役割を担い、財政的にも支える立場でいなければいけません。

被災後に体制づくりを検討していては遅く、平時から被災時を想定した体制作りを進めておかなければいけません。

既存の災害対策基本法においては、ボランティアとの連携については規定されていますが、これをさらに進めて、専門士業団体や多様な民間団体との連携についても、規定するなどの法改正が必要だといえます。

まとめ

実際に、災害ケースマネジメントの支援を受けた人は、「身内より親身になってくれる存在」と話す人もいます。

こうしたきめ細やかな支援が可能なのも、多様な支援団体があってこそだといえます。

継続的にこのような支援策を続けていくためにも、いち早く制度化し、いつ起こるかわからない災害へ備えていきたいものです。

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