高波発生メカニズムとは?日本3大湾の被害を例に紹介します。

高波発生メカニズムとは?日本3大湾の被害を例に紹介します。自然災害

東京湾、大阪湾、伊勢湾。

人と資産が集中している日本の3大湾。

この3つの湾は、地形的に見ても、高潮に脆弱な面を持っています。

それぞれに過去大きな被害も受けており、その歴史を紹介していきます。

高潮・高浪の発生メカニズムも知っていただき、防災への知識に役立ててもらえたらと思っています。

高潮発生のメカニズム

高潮とは、海岸で通常の潮位よりも異常に海面が上昇する現象をいいます。

その主な原因は、「気圧低下による海面の吸い上げによるもの」「強風による吹き寄せ」が挙げられます。

その他には、波が海岸近くで砕け、多量の海水が岸に運ばれたまま沖に戻れないということもあります。

この海水が海岸付近にとどまった結果、海面が上昇するということも、高潮を引き起こす原因となります。

同じような海面の上昇現象として、「津波」が挙げられますが、津波は基本的に、海溝型地震による地殻変動が原因で発生するものなので、その発生原因が違う点には注意をしておきましょう。

高潮が発生しやすい地域

台風が接近、または上陸しているときは高潮の規模が大きくなる可能性が高く、比較的高潮の危険性が高い地域もわかっているようです。

北半球で発生する台風は、反時計回りに強い風が吹き込み、進行方向に対して右側が強いです。そのため、特に南に開いた湾は、その東側で非常に強い南風が吹き、高潮が発生します。

これに、天文潮の満潮や高浪が重なると、さらに被害が拡大します。

高潮被害が発生しやすい場所

地形的に高潮が発生しやすい場所もあり、台風発生時には、海岸や湾岸部には近づかないことが重要です。

ゼロメートル地帯

海岸付近の低地などでは、海面との差がほとんどないため、高潮が発生すると海水が流れ込むおそれがあります。

急深な海底地形

波が海岸部で、急激に高くなり、災害発生の危険が高いです。

河口部

海の高潮と河川の洪水両方による浸水の危険性が高い。低い土地では地形の特質などを把握し、早めの対策を心がけたい。

湾奥部

海水が湾外へと逃げにくく、湾奥に溜まりやすいため、湾内の水位が上がります。

V字谷等山地と海岸部が迫っている場所

波の集中が起こりやすく、局所的に水位が上がって危険です。

高潮と高波の違い

海面の異常な上昇が高潮だとすると、波の山から谷までの高さが高いのが高波と言えます。

気象庁では、波浪注意報・警報の対象になる程度の高い波を「高波」としており、数字としての定義はしていません。

高波は強風が吹くことで発生します。また、「波浪」とは、海洋表面の波動のうち風により発生した、周期が1から30秒程度の波です。

風が吹いたことで、その場所に発生する「風浪」と、ほかの場所で発生した風浪が伝播、あるいは風が静まった後に、残された「うねり」のふたつを合わせたものを指します。

大湾で発生する高潮

大規模な浸水により、甚大な被害が想定される高潮ですが、特に、人と資産が集中している日本の3大湾は、地形的にみて高潮に脆弱な面を持っています。

それぞれの湾について紹介していきます。

東京湾

東京湾では近年、豪雨の発生頻度が増加傾向にあり、全国各地で風水害が起こっています。

この東京湾は、長期的な視点で見ても、地球温暖化による気候変動で、台風の強大化や海面水位の上昇も起こりうると想定されていて、風水害対策を考える際に重要な検討要素となっています。

東京湾の高潮を考える際のキーワードは「ゼロメートル地帯」で、地盤の高さが遡望平均満潮位よりも低い土地の総称で、東京湾のゼロメートル地帯は、総面積が約116k㎡です。

これは、山手線の内側二つ分に相当し、この中に約176万人もの人口と行政や大企業をはじめとする都市機能が密集しています。

この状況は、大阪湾と伊勢湾を含めた日本の3大湾の特徴でもあり、破堤によってゼロメートル地帯が浸水すると、破壊的な被害の恐れがあります。

東京湾の海岸保全施設は、過去の大規模台風を想定して高潮防護能力を高めてきていますが、人口や資産を防護するために、堤防の嵩上げ、耐震調査、老朽化対策、水門開閉の自動化、遠隔操作化、高潮ハザードマップの作成など、より高水準の対策も現在進められています。

大阪湾

1934年9月21日、高知県室戸岬周辺を通過した台風は、午前8から9時頃に大阪湾を直撃しました。

上陸した地点の名前で「室戸台風」と呼ばれるこの台風は、大阪湾に高潮による大きな被害をもたらしました。

防風が最も激しくなった時間帯が、子供たちの通学時間にあたったこともあり、倒壊した家屋の下敷きになった犠牲者が多くいました。

さらに、10分間で2mも潮位が高くなり、突然現れた高潮による二次災害が発生し、倒壊家屋の木材などが淀川などの河川氾濫にともないバラバラに流されてしまいました。

16年後の9月3日、「室戸台風」に近い進路で、大阪湾に上陸した「ジェーン台風」も、高潮被害を引き起こしました。

比較的降雨量の少ない台風であったものの、強風による吹き寄せによって大阪湾や北陸地方沿岸で高潮が発生しました。

大阪湾の潮位は満潮時より2.1m以上も高くなり、おびただしい数の家屋が浸水しました。

20世紀、日本では2mを超える大型の高潮を9回記録していますが、そのうち5回が「室戸台風」「ジェーン台風」を筆頭に大阪湾に発生している。

伊勢湾

1959年9月26日の夜、和歌山県潮岬に上陸した台風は、一般的に、「伊勢湾台風」と呼ばれています。

この超大型台風は、近畿地方や中部地方に大きな被害を与えて、戦後最大級の自然災害として記録に残っています。

死者と行方不明者の数は、合わせて5098人。負傷者は、3万8921人にも及ぶ大惨事でした。

被害が拡大した理由は、激浪とともに、湾内へ押し寄せた高潮です。南向きに口を開けた伊勢湾は、地形的に高潮が発生しやすくなっています。

数mの高さがった堤防をやすやすと乗り越えた高潮は、海岸保全施設を破壊し、内陸に広がるゼロメートル地帯へと流れ込みました。

庄内川水系、木曽川系の流域は、当時から人口密集地帯で、同時に風水害に対しても脆弱でした。

設備や建物の被害も甚大で、決壊した伊勢湾の護岸堤防は、19カ所、河口付近の河川堤防が、37カ所、全半壊の家屋は、15万3890棟、床上浸水15万7858棟、という記録が残っています。

まとめ

高潮・高波の発生メカニズムと、日本3大湾の過去の災害を紹介しました。

発生しやすい地形や場所も紹介しましたが、それ以外の場所でも高潮・高波は発生する可能性は十分にあります。

特に台風による強風が理由ですので、その時期には注意が必要です。

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